
「人が足りない」
「採用しても、いい人が来ない」
「社員が育たない」
経営者の方と話していると、こうした悩みをよく聞きます。
一方で、社員をほとんど増やさずに、事業を拡大している会社もあります。
AIやITを使う。外部の専門家を活用する。定型業務を外注する。
そして、必要のない仕事をやめる。
こうした会社を見ていると、疑問が浮かびます。
人が足りないから、人を採用する。
この当たり前は、これからも当たり前なのでしょうか。
AIは「人を減らす道具」なのか
AIによって仕事が効率化され、人が少なくて済む。
これは間違いではありません。
ただ、それだけなら、これまでのIT化とそれほど変わりません。
企業はこれまでも、会計、販売管理、給与計算など、
多くの定型業務をシステム化してきました。
それでも人の仕事が残ったのは、
非定型業務があったからです。
・文章を読んで理解する。
・情報を集めて整理する。
・資料を作る。
・相手に応じて回答する。
・過去の事例を参考に判断する。
こうした仕事は、従来のシステムでは扱いにくく、人間がやるしかありませんでした。
AIが大きく違うのは、
まさにこの領域に入ってきたことです。
だとすれば、AIのインパクトは「作業時間が20%減る」といった話では終わりません。
仕事の作り方そのものが変わる可能性があります。
10人の仕事を、3人で回す
例えば、ある業務を10人で行っているとします。
一人ひとりがAIを使って20%効率化する。それも一つの方法です。
しかし、AIを前提に仕事そのものを組み直せば、10人でやっていた仕事を5人、場合によっては3人でできるかもしれません。
すると、「余った7人をどうするのか」という話になります。
ここで、人員削減を考えるのは少し早い。
むしろ、その7人が別の仕事を始められる
と考えた方が面白いのではないでしょうか。
会社の中に「経営者」をたくさん作る
ここで経営者が考えるべきなのは、AIで何人減らせるかではありません。
組織モデルそのものを変えられないか。
これまでの会社は、
一人の責任者の下に、多くのメンバーを配置してきました。
しかし、一人で扱える仕事の範囲が広がれば、この形を前提にする必要はありません。
一人の社員が、
・AI
・システム
・外部の専門家
を使いながら、一つの仕事や機能を動かす。
社員一人+AI+外部リソース=1チーム
という形です。
その社員は、単に与えられた作業をする人ではありません。
・何をするかを決める。
・顧客との関係を築く。
・仕事を仕組み化する。
・必要なリソースを組み合わせる。
・そして結果に責任を持つ。
言ってみれば、
一つの小さな事業を動かす「経営者」です。
これまでの「少ない責任者の下に多くのメンバーを置く」組織から、
会社の中に小さな経営者をたくさん作る組織へ。
同じ社員数でも、新しい商品、顧客、サービスに取り組むチームを増やせます。
AIによる生産性向上を、人員削減ではなく、一人ひとりが動かせる事業の範囲を広げることに使う。
困るのは「人の工数」を売っている会社
一方、この変化と相性の悪いビジネスもあります。
SESやSI、コンサルティングなど、人の人数や工数をベースに顧客へ請求するビジネスです。
AIによって10人で行っていた仕事が5人でできるようになれば、顧客が購入する工数も減ります。
提供側もAIで生産性を上げられますが、人月単価で請求している限り、
生産性を上げるほど、売る工数が減る。
という矛盾が起こります。
人を採用し、その工数を販売することで成長してきた企業は、ビジネスモデルそのものを見直す必要が出てくるでしょう。
この話は、また別の機会に考えてみたいと思います。
「人がほとんど要らない仕事」から考える
では、これから経営者は何を考えるべきでしょうか。
「この仕事には何人必要か」ではなく、
「この仕事を、人がほとんどいなくても回すにはどうすればいいか」
から考えてみる。
AIに任せる。システムでつなぐ。外部の力を使う。
そのうえで、人にしかできない仕事を残す。
まず、人が要らない業務モデルを考える。
それでも必要な部分にだけ、人を置く。
これまでとは、順番が逆です。
AI時代に重要なのは、人を減らすことではありません。
人を増やすことに頼らない仕事を作り、そこで生まれた人の力を、新しい仕事へ振り向ける。
そして、
会社の中に「小さな経営者」をたくさん作る。
「人が足りないから採用する」。
その前に、
「人がいなくても回る組織」から考えてみる。
これが、これからの経営者に必要な発想です。
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