コラム:社員の「脱線」は、会社へのメッセージかもしれない

不祥事が起きると、私たちは
会社の「弱いところ」を探します。

・管理が甘かった。
・教育が足りなかった。
・成果主義が行き過ぎた・・・・

しかし今回、私は違うことを思いました。

問題は、会社の「弱さ」ではなく、
「強さ」から生まれたのではないか。

外資生保のプルデンシャル生命で、大規模な不祥事が発覚しました。

過去30年にわる犯罪行為を含む不正な顧客取引が明るみに出たのです。

同社は2026年2月から、新規契約の販売を自粛しています。

背景には、成果主義などの影響もあるでしょう。

しかし、それだけでは説明できないことがあります。

なぜ顧客は、保険営業マンから、保険以外の商品を買ったのでしょうか。

 

気になった「4つ目の不正」

同社の報告書によれば、
今回の不適切行為は、大きく4つに分けられます。

① 架空商品の販売などによる詐欺行為
② 会社とは無関係の投資話を持ちかけ、金銭を受領
③ 顧客からの個人的な借金
④ 無許可の投資商品や業者の紹介

私が気になったのは④です。

69人の社員・元社員が関与。

顧客は240人。支払額は約13.1億円。

この類型では、営業担当者自身は、
顧客から直接お金を受け取っていません。

では、なぜ保険営業マンが、
自分には全く得にならない
保険以外の商品を紹介したのでしょうか。

 

商品ではなく、人生設計から始める

プルデンシャル生命の営業担当者は、ライフプランナーと呼ばれます。

その営業は、商品説明から始まりません。

まず、顧客の人生設計を理解します。

家族、仕事、収入、資産、将来。

それらを聞き、必要な保障を設計します。

従来型の生保営業とは、少し重心が違います。
(特に、同社が事業を始めた頃は)

商品を売るために、顧客を理解する。
VS.
顧客を理解してから、商品を提案する。

似ていますが、大きな違いがあります。

後者では、担当者自身が商品以上に重要になります。

知識、提案力、人脈。

そして、顧客との信頼関係です。

長く付き合えば、
単なる保険の担当者ではなくなります。

「この人なら、お金のことを相談できる」

そんな存在になります。

それこそが、同社の強い営業力
を支えてきたように思われます。

 

顧客の課題は、保険では終わらない

しかし、ここから問題が始まります。

人生全体を理解すれば、保険以外の課題も見えてきます。

退職金の運用。

相続や不動産。

経営者なら、事業承継もあります。

顧客が、信頼する担当者に相談するのは自然です。

ところが、会社が提供する商品は生命保険が中心です。

顧客を深く理解する力に、
会社のソリューション(品揃え)が追いついていない。

推測ですが、
ここにズレがあったのではないでしょうか。

顧客から投資について相談される。

自社商品では解決できない。

そこで担当者が、自分の知っている投資先を紹介する。

それが会社の認めていない商品なら、会社の管理は及びません。

もちろん、今回の紹介行為が、
すべて顧客のためだったとは限りません。

個人的な利益が目的だったケースもあるでしょう。

それでも、顧客の課題に深く関わる営業と、
保険中心の商品構成にはズレがあります。

さらに、顧客との関係は担当者に集中します。

顧客との信頼。

知識や提案力。

それ自体が競争力です。

一方で、何を相談され、何を提案しているのか。

会社からは見えにくくなります。

会社の強みが、そのままリスクにもなるのです。

 

不正の中に、次の事業が隠れている

では、経営者は何を見るべきでしょうか。

もちろん、不正は止めなければなりません。

しかし、ルールを厳しくするだけでは、重要なものを見落とします。

なぜ社員は、会社の外に答えを探したのか。

そこを見る必要があります。

顧客を深く理解する。

すると、自社では解決できない課題が見つかる。

それが繰り返されるなら、
会社のソリューションが顧客に追いついていない可能性があります。

社員の「脱線」は、不正の兆候です。

しかし同時に、
新しい顧客ニーズの兆候でもあります。

だから、止めるだけでは足りません。

自社の商品を増やす。

新しいサービスをつくる。

自社で難しければ、外部と組む。

顧客から集まる相談に合わせて、会社の側も変わる必要があります。

すべてを会社で管理する必要もありません。

顧客との信頼。

営業担当者の知識。

提案力や人脈。

個人に属しているからこそ、強いものもあります。

属人化をなくせば、競争力まで失います。

大切なのは、強みを消すことではありません。

個人の強みを、会社の事業に変えていくことです。

今回の不祥事を、単なる管理不足として見る。

それでは、大切なものを見落とします。

会社の強みが、会社の枠を超え始めたとき。

そこにはリスクがあります。

しかし同時に、

次に会社が変わるべき方向も、そこに表れているのです。

※上記内容は、外部公表情報を元にした筆者の推論です。

 

 

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