
最近、企業の意思決定を見ていて、少し気になることがあります。
それは、本来は経営が決めるべきテーマまで、現場側へ委ねられているケースが増えているように感じます。
もちろん、現場の意見を取り入れること自体は重要です。
実際、現場でしか分からないことは多くあります。
例えば、
- 日々の業務改善
- 顧客対応の工夫
- 営業現場での提案方法
- 自社サイトのチューニング
- 作業手順の改善
- 品質改善
- 現場運用ルール
などは、現場主導の方がうまくいきやすい。
現場が最も実態を理解しているからです。
マクロの意思決定の性質
一方で、
- どの市場を狙うか
- AIをどう活用するか
- ERPを導入するか
- どの事業へ投資するか
- 何を強みとして戦うか
といったテーマは、現場改善とは少し性質が違います。
これは、「会社としてどこへ向かうか」というマクロの意思決定です。
最近は、こうしたテーマについても、
「みんなで考えましょう」
という形になることが増えているように感じます。
なぜ現場へ委ねられるのか
その背景には、経営側にも答えが分からない、という事情があるのだと思います。
実際、今は非常に難しい時代です。
AI、地政学、サイバーセキュリティ、グローバル競争。
経営判断に専門性が必要なテーマが急激に増えています。
ERPやAI導入一つ取っても、技術的に理解するだけで大変です。
経営者が、「何が正解なのか分からない」と感じるのは当然です。
「分からない」と「委ねる」は違う
ただ、ここで重要なのは、
「答えが分からないこと」
と
「意思決定を現場へ委ねること」
つまり
「意思決定を放棄すること」
は別だということです。
例えばAIでも、
- コスト削減を重視するのか
- 新しい価値創出を狙うのか
- 業務標準化を進めたいのか
によって、選択肢は変わります。
ERPでも、
- 標準化を優先するのか
- 現場柔軟性を残すのか
- グローバル統制を強めるのか
で、設計思想は大きく変わります。
これらは技術論ではありません。
「自社は何を大事にするのか」という経営判断です。
経営の代わりはいない
コンサルタントなど専門家は、技術的な選択肢は提示できます。
現場は、実態や運用課題を教えてくれます。
しかし、
- 何を優先するのか
- どの方向へ進むのか
- どのリスクを受け入れるのか
は、経営が決めなければなりません。
ここを曖昧にしたまま、
「現場で議論してください」
になると、間違った答えをだしかねません。
判断の基準は「自分たちのポジション」
では、経営は何を基準に判断すべきなのでしょうか。
重要なのは、「自分たちのポジション」を明確にすることです。
ここで言うポジションとは、市場シェアの話ではありません。
「自分たちは何を大事にするのか」
という判断軸です。
例えば、
- スピードを重視する
- 品質を重視する
- 個別対応を強みにする
- 標準化を進める
- 短期利益より長期投資を優先する
などです。
この軸が曖昧だと、専門家の意見や現場の声に流さます。
逆に、ポジションが明確なら、
「自社としては、こちらを優先する」
という判断ができるようになります。
経営状況やステージなどによって変わっていくこともあるでしょう。
しかし、その時点でのポジションはあるはずです。
経営に求められる役割
もちろん、経営者がすべてを知る必要はありません。
むしろ今の時代、それは不可能です。
だからこそ、
- 専門家の知見を使う
- 現場の実態を聞く
- 複数の選択肢を比較する
ことが重要になります。
ただし最後に必要なのは、
「自社としてどちらへ進むのか」
を決め、言語化することです。
マクロは経営、ミクロは現場
強い組織は、
- マクロは経営が決める
- ミクロは現場に任せる
という役割分担が比較的明確です。
逆に、この境界が曖昧になると、
- 会議ばかり増える
- 方針が定まらない
- 誰も責任を持たない
という状態になりやすい。
不確実な時代だからこそ、
経営には「正解を知っていること」よりも、
「自社として何を大事にするのか」を定め、
方向性を示す役割が、より強く求められています。
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