
私は、サラリーマンを辞めて独立してから、10年になります。
先日、ある集まりで、こう聞かれました。
「独立する時、怖くなかったんですか?」
私はこう答えました。
「ダメだったら、また戻ればいいと思っていました」
もちろん、独立を軽く考えていたわけではありません。
仕事が取れなければ収入はなくなります。
営業も自分でしなければなりません。
ただ、
ダメなら、また会社員に戻ればいい。
そう考えると、独立はそこまで怖い選択ではありませんでした。
大きな決断をする際に、人は往々にして「現状維持」を選びます。
今回は、そんな心理について考えてみます。
人は損を避けようとする
人は何かを決める時、現状維持を選びがちです。
今のままなら、大きく失うことはありません。
新しいことを始めると、何かを失うかもしれません。
そのため、多少不満があっても、今の状態にとどまる方が安全に見えます。
この心理は、行動経済学では「損失回避」と呼ばれます。
損失回避とは、
「得をする喜びよりも、損をする痛みを強く感じる」
という心理です。
たとえば、1万円を得るうれしさと、1万円を失うつらさ。
金額は同じです。
しかし、多くの人は、失うつらさの方を強く感じます。
この考え方は、心理学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが提唱した「プロスペクト理論」で知られています。
人は、いつも合理的に判断しているわけではありません。
「得られるかもしれないもの」よりも、
「失うかもしれないもの」に強く反応します。
不確実性が怖い
損失回避が起きる理由の一つは、不確実性です。
今の状態は、良くも悪くも予測できます。
収入も、仕事の進め方も、人間関係も、ある程度は見えています。
しかし、新しい選択をすると、先が見えません。
うまくいくかもしれない。
でも、失敗するかもしれない。
期待した結果が出ないかもしれない。
この「分からない」という状態が、人にとって大きなストレスになります。
だから人は、不確実な成功よりも、予測できる現状を選びやすいのです。
転職したい。
でも、次の会社が合うか分からない。
新しい事業を始めたい。
でも、本当に売れるか分からない。
値上げした方がよい。
でも、顧客が離れるかもしれない。
このように、不確実性は行動を止めます。
見えている損、見えていない損
もう一つ大きいのは、見えているものと見えていないものの差です。
変えることで失うものは、見えやすいです。
独立すれば、安定収入を失うかもしれません。
転職すれば、今の人間関係を失うかもしれません。
値上げすれば、顧客が離れるかもしれません。
一方で、変えないことで失うものは、見えにくいです。
独立しなければ、自分の可能性を試す機会を失うかもしれません。
新しい事業を始めなければ、市場の変化に遅れるかもしれません。
値上げしなければ、利益が出ない状態が続くかもしれません。
動くリスクは見えやすい。
でも、動かないリスクは見えにくい。
この差が、現状維持を安全に見せます。
しかし、現状維持も一つの選択です。
選択である以上、そこにはコストがあります。
他者に意思決定を促す時
これは、自分の意思決定だけの話ではありません。
他者に意思決定を促す時にも重要です。
たとえば、相手に新しい提案をする時。
こちらは、メリットを説明しがちです。
効率化できます。
売上が上がります。
コストが下がります。
もちろん、メリットを伝えることは大事です。
しかし、相手の頭の中では、メリットより先に不安が浮かんでいることがあります。
今のやり方を変えるのが不安。
社内を説得できるか分からない。
失敗した時に責任を問われるかもしれない。
本当に成果が出るか分からない。
相手は、提案内容だけでなく、
「変えることの不確実性」
を見ています。
だから、意思決定を促す時には、メリットだけでは不十分です。
相手が何を失うと感じているのか。
何を不安に思っているのか。
どこが不確実に見えているのか。
そこを整理する必要があります。
大事なのは、相手の背中を無理に押すことではありません。
不確実性を小さくすることです。
小さく試す。
段階的に進める。
撤退ラインを決める。
影響範囲を限定する。
こうした工夫があると、相手は意思決定しやすくなります。
迷った時に問い直す
人は、迷った時に現状維持を選びがちです。
それは自然な心理です。
しかし、その現状維持は本当に安全なのでしょうか。
何かを決める時には、
「変えたら何を失うか」だけでなく、
「変えなかったら何を失うか」も考える。
誰かに意思決定を促す時には、
相手にとっての不確実性を小さくする。
それだけでも、判断は少し変わるのではないかと思います。
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