| 目次 |
|
ITやコンサルティングを、顧客へ提案をしていると、
「内容はしっかりしているのに、なぜか決まらない」
ということがある。
・個別要求事項への対応方針も記載している。
・体制も整理している。
・見積もりも入っている。
・実績も提示している。
それでも、提案は通らない。
このような場合、問題は提案内容そのものではなく、
提案の進め方や出し方が、顧客の状況に合っていないケースが多い。
本稿では、「刺さる提案」を実現するための、
5x3x3ルール(3ステップx3顧客層x3コンテンツ)について説明する。
提案は「一発勝負」ではない
大前提として、提案とは「一発勝負」ではない。
顧客側には、検討の順序や内部調整のプロセスが存在する。
多くの場合、意思決定は次のような段階を踏んで行われる。
・最初は情報収集
・次に方向性の確認
・その後に具体策と実行可否の検討
このプロセスを前提に考えると、
提案も、それに合わせて複数回に分けて行うのが合理的である。
複数回に分けることで、次のようなメリットがある。
・ 相手の理解度や関心の変化を確認できる
・提案者側の仮説のズレを早い段階で修正できる
・顧客内部での検討状況を把握しやすくなる
・何より、人は接触回数の多い相手を信頼しやすい
提案とは、単に自社のサービスを説明する行為ではなく、
顧客の意思決定プロセスに同期してすすめる活動である。
ルール1:提案の5ステップ
提案のプロセスは、次の5ステップに整理できる。
顧客がどのステップにいるのかを見誤ると、刺さるものも刺さらなくなってしまう。
① 知ってもらう
まずは、存在や立場を理解してもらう段階である。
今まで取引のない見込み客であれば、
この時点では、提案内容よりも、
「どのような会社か」「どのような考え方を持っているか」が見られている。
② 信頼してもらう
次に、信頼を得る段階に進む。
説明の分かりやすさ、話の整理の仕方、対応の誠実さなどを通じて、
安心して話を進められる相手かどうかが判断される。
情報提供と同時に、対話を通して相手を理解する段階と捉えることが重要である。
顧客と一緒に課題を解決しようとする姿勢を見せるのである。
自分を理解してくれる相手を、人は信頼する。
③ 要望を実現してくれそうだと思ってもらう
信頼できる相手だと認識された後、
「この人たちは、自分たちの状況を正しく理解しているか」が問われる。
ここでは、聞いた内容や要望をそのまま整理するだけでなく、
背景や制約条件を含めて構造化できているかが重要になる。
さらに、それらに対して、
どのような解決策が考えられるのかという「仮説」を示すことが求められる。
顧客の気づいていない課題、顧客の思いつかない実現案。
それが提示できれば最高である。
④ 実行力がありそうだと思ってもらう
方向性に納得した後は、
「実際に進められるのか」という観点が強くなる。
体制、進め方、想定されるリスクへの対応方法などを示し、
現実的に実行できるイメージを持ってもらうことが重要である。
・事例など具体的な話し
・成果物の例
・打ち合わせ日程とそのアジェンダ
などを提示できると効果的である。
⑤ 一緒にやりたいと思ってもらう
最後は、
「この会社と一緒に進めたい」と思ってもらえるかどうかである。
これは、個々の説明内容だけで決まるものではない。
複数回のやり取りを通じた、全体的な印象が大きく影響する。
最終的には、課題解決を一緒にすすめるパートナーという印象を与えたい。
こうした感情は、たった一回の提案プレゼンから生まれることはない。
複数回の接点を通じて、段階的に進めていくことが前提となる。
ルール2:3種類の顧客層
なお、「要望」を考える際に重要なのは、
クライアント内部には複数の立場が存在するという点である。
代表的には、次のようなレイヤーがある。
・IT部門
・業務部門
・経営層
同じ提案であっても、それぞれが関心を持つポイントは異なる。
誰に向けた提案なのかを意識し、相手の関心を見極める必要がある。
この中で、誰が「最終意思決定者」かを見極めることは重要。
多くの場合、解くべき課題は経営層の課題である。
しかし、経営層だけに刺さっても、実装は上手く行かない。
したがって、すべての関係者に理解をしてもらう必要がある。
ルール3:3種類の提案コンテンツ
提案内容は、次の3要素で整理できる。
① 「能力」の説明
実績、スキル、体制など、
提案者側の強みを示す要素である。
これについては、ほとんどの企業がやっているだろう。
しかし、主語が自社になっているケースも少なくない。
自社の能力が、相手にとってどんな価値があるかという視点で整理することが必要である。
そして、自社の強み・違いを一言で表現できるのが理想である。
② 作業アプローチ/作業計画 の説明
どのように進めるのか。
何を、どの順番で、どのような時間軸で、誰が担当するのか。
何か問題があった場合はどう対応するのか。
下請け的な仕事の仕方をしていると、
正直、この部分は顧客側が担っている場合もある。
しかし、その領域のプロとして、
自社としてのあるべき進め方を提示することは、
安心感の醸成に不可欠である。
正直、あまり面白いコンテンツではないが、重要なパーツである。
③ 課題解決仮説
なぜこの課題が起きているのか。
どこに手を打てば、改善が見込めるのか。
どんな未来が実現されるのか?(これが大事!)
多くの提案は①と②が中心になりがちで、
ひどい場合には①の説明だけで終わってしまうこともある。
しかし、クライアントが判断材料として最も重視するのは③である。
ここで大事なのは、
「顧客目線」で抽出した課題、課題解決案を提示することである。
一般的な課題を並べ、自社に都合の良い課題解決を提示するのは逆効果である。
つまり、ここが最大限の差別化ポイントである。
提案を「設計」する
提案は、次の3点の掛け算で考えることが重要である。
・提案のステップは?
・クライアントのレイヤーは?
・提案の3要素の内、どれが必要か?
初期段階で、経営層向けに詳細な作業計画を示しても、理解されにくい。
逆に、実行段階に入ってから抽象的な話だけをしても、不安が残る。
したがって、提案の前に、次の点を整理しておくとよい。
・今回は誰に向けた提案か
・相手は5段階のどこにいるか
・今回は3要素のうち、何を中心に伝えるか
提案とは、すべてを一度に説明することではない。
相手の立場と検討段階に応じて、必要な情報を、必要な順番で提示する行為である。
提案を設計するという視点を持つことで、
「正しいのに通らない提案」は、着実に減らしていくことができる。
標準提案を作成する価値
ここまで述べた考え方をもとに、
「標準提案書」や「標準提案アプローチ」を整備しておくことには、次のようなメリットがある。
・ゼロから提案を作成する必要がなくなる
・誰でも一定レベルの提案ができるようになる
・自社のケイパビリティや案件の進め方を標準化できる
・営業活動の進捗や質の可視化化ができる
提案を属人的なスキルに頼るのではなく、
組織として再現可能な形にすることが、安定した受注と効率化につながる。
