コラム:QBハウスに学ぶ、「作らない」システム開発

皆さんは QBハウスという床屋さんをご存じでしょうか。
駅ナカや商業施設でよく見かける、10分カット専門のお店です。

「本当に10分で大丈夫なの?」
「安いけど、ちゃんとしているの?」

そんな印象を持つ方もいると思います。

ところが、QBハウスは国内外で店舗数を伸ばし、累計来店者数は3億人を超えています。
理美容の世界で、ここまでモデルを確立した会社は多くありません。

実は、この成功の背景には、
システム開発にもそのまま応用できる“ある考え方”があります。

 

QBハウスの成功要因

まずは、なぜQBハウスがここまで伸びたのか。
ポイントは大きく5つあります。

1. そぎ落とす

QBハウスは、従来の理髪店が当たり前に提供していたシャンプー、マッサージ、会話、スタイリング……
更に、パーマやカラーといった儲けの大きいサービスをやめました。
これらを全部削って「カットだけ」に絞りました。

この「やらないことを決める」ことこそが、最大の差別化でした。

 

2. 標準化

そして、カットだけを、
作業を細かく分解し、手順を完全に固定化しました。
誰が切っても一定品質になるようにしました。

これにより、10分カットというスピードと品質を両立させました。

 

3. 設備の最適化

そして、10分カットを効率的に行うために必要な設備を揃えました。

洗髪台の代わりに、髪を吸う”掃除機”。
カットに必要になモノがすべて揃った専用什器。
単一価格、単一メニューのセルフレジ。
開始~終了の自動システム登録による作業効率モニター。

この「目的に合わせた設備の最適化」が、低コスト運営を実現しました。

 

4. 心理的ストレスの軽減

予約不要
会話不要
価格は明瞭(単一)
待ち時間の“見える化”

「入るのに勇気が要る」という、
従来型美容院の負の体験を払拭しています。

 

5. 短時間 × 高回転

10分で一人。
6席あれば、1時間で36人。

この“高回転モデル”が、収益を支えています。

 

ここまで徹底して”無駄”を削り、それを価値にしたからこそ、QBハウスは多くの利用者を獲得し、成長してきたと言えます。

 

システム開発の課題

一方で、
システム開発の現場はどうでしょうか。

正直に言えば、
「やりすぎ」になっているプロジェクトが多くありませんか?

  • 顧客要望が膨らむ
  • 機能追加が止まらない
  • 例外対応のオンパレード
  • 詳細な要件定義
  • 厚すぎる文書
  • そして複雑なカスタマイズ

その結果、
納期が伸び、利益率が下がり、
チームは疲弊してしまう。

打ち合わせで、お客様から
「大した変更じゃないですよね?」
「ついでにこの機能も追加で」
と軽く言われ、困った経験があるのではないでしょうか。

 

QBハウスに学ぶ、新たなシステム開発の在り方

では、QBハウスの発想を、
システム開発にどう応用できるのでしょうか。
(あくまでも思考実験です)

 

1. 非本質的なものをそぎ落とす

文書は最小限にします。
例えば、1ページに抑える。

ヒアリングも最小限にします。
何をやっているかではなく、
「成果物が何か」だけを揃えます。

“お客様の全業務を理解する”のではなく、
“何が出力されれば満足なのか”に絞るのです。

 

2. 標準にこだわる

機能は標準機能をベースにします。
標準部品を組み合わせて作ります。

Fit・Gapベースで判断します。
「まずは標準を優先する」
この前提をチーム全体で共有します。

 

3. 高速化 × 高回転

今の時代、スピードは価値です。
例えば、「2日でプロトを作る」。

プロトを見ながら現場で修正。
会議で議論するより、画面を触ったほうが圧倒的に早い。

「動くものを先に見せる」
これだけでプロジェクトは驚くほど軽くなります。

 

4. 心理的ハードルを下げる

「システム開発は面倒だ」
このイメージを払拭します。

そのためには、
プロセスを軽くし、
ドキュメントを減らし、
打ち合わせ回数を減らす。

お客様が“参加しやすい”状態をつくることが大切です。

 

AI開発時代だからこそ求められる標準化

「AIでアプリがすぐ作れる時代なんだから、
自由に作ればいいのでは?」

そんな意見もあるでしょう。

しかし、実は逆です。

AIで簡単に作れる時代ほど、
標準化が欠かせません。

 

理由1:運用が重要になる

作るのはAIでも、結局
運用・改善・統合は人や組織が担います。

標準化されていないと、
運用・保守のコストが跳ね上がります。

 

理由2:カオスを回避する

AIで簡単に作れる →
現場が独自アプリを量産 →
バラバラの仕様 →
保守不能

これ、すぐ起こります。

 

理由3:非効率業務の再生産を防ぐ

AIは指示された“現状のクセ”まで忠実に作ります。
つまり、非効率の再生産です。
だからこそ、
最低限の業務に絞る標準化が必須です。

 

「そぎ落とす」ビジネスチャンス

QBハウスは、
「そぎ落とす」「標準化」「高回転」
というシンプルな軸を徹底し、成功しました。

システム開発も同じです。

  • 非本質的なものを減らす
  • 標準機能に合わせる
  • プロトで高速に回す
  • お客様の心理的負担をなくす
  •  AI時代だからこそ標準化

この視点を持つだけで、
プロジェクトは軽くなり、
利益率も改善し、
チームも救われます。

そして何より、
お客様にとっても“分かりやすい開発”になります。

システム開発企業でも、部分的には同様の取り組みを行っている企業はあるでしょう。
しかし、QBハウスほど「そぎ落とす」ことを戦略の中心に据えている企業は少数だと思います。

そこに次のビジネスチャンスがあるのではないでしょうか?

 

 

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