
「Webからの問い合わせが増えないんです」
一方で、「うちは人が営業するモデルだから、
ウェブなんて関係ないですよ」
経営者の方からそんな言葉を聞きます。
ですが、この二つの話し(問題点)の本質は同じです。
それは、“フロントエンド”の仕組みが整っていないことです。
フロントエンドとは何か
フロントエンドとは、顧客と最初に接点を持つ
“入口”のことです。
Webサイトや広告、営業担当者、イベント、SNS、あるいは今ならAIチャットもそうです。
顧客があなたの会社を「最初に認識する場所」。
それがフロントエンドです。
どんなに良い商品や技術があっても、
顧客の頭の中に「その会社の存在」が入っていなければ、選ばれることはありません。
顧客のマインドシェアを取る―つまり「思い出される場所にいること」。
それがビジネスの勝敗を分けます。
「入口」をめぐる覇権争い
歴史を振り返ると、この「入口」をめぐる争いが常に起きてきました。
ブラウザ戦争、検索エンジンのシェア争い、
スマートフォンOSの覇権争い。
どれも「ユーザーが最初に触れる場所を押さえた企業」が勝ち残っています。
なぜなら、人は一度 ”慣れた” 入口をなかなか変えないからです。
“どこから始めるか”が固定されると、その後の選択肢も自然に限定されていきます。
まさに、ビジネスの主導権はフロントエンドにあるのです。
いま、新しい入口を握るのはAI
そして今、その主導権を握ろうとしているのがAIチャットやAIエージェントです。
多くの人が「とりあえずAIに聞く」と言うようになりました。
ChatGPTをはじめとする対話型AIが、
検索エンジンやアプリに代わって“最初の相談相手”になりつつあります。
もし、AIが自社の商品やサービスを認識していなければ、顧客の選択肢からあなたの会社は最初から外れてしまう。
つまり、「存在していない」のと同じなのです。
AIをどう活用するかだけでなく、
“AIに見つけてもらう構造”をどう作るかが、
これからのフロント戦略になります。
リアル営業でも本質は同じ
もちろん、これはIT業界やWebサービスだけの話ではありません。
昔から営業の世界では
「とにかくお客様に顔を出せ」と言われてきました。
それは精神論ではなく、
“顧客の意識の中に自社を残す”ための戦略でした。
名刺交換、訪問、電話、展示会、年賀状。
どんな手段であれ、「接点を持ち続けること」が最も大事だったのです。
それが今、メールやウェビナー、SNS、
そしてAIを活用したリード管理や商談自動化に置き換わってきました。
しかし、手段は変わっても、フロントエンドを握る重要性は変わりません。
勝敗を分けるのは「仕組み」
ここで大事なのは、「経営者がもっと頑張る」ことではありません。
優秀な営業担当を増やすことでもありません。
“フロントを押さえる仕組み”をどう作るか、です。
例えば、
・顧客が課題を感じた瞬間に、自社に自然とたどり着く導線を設計する
・初回対応を自動化し、すぐに信頼を感じてもらう仕掛けを作る
・過去の接点データを分析し、最適なタイミングで再アプローチする
こうした仕組みがあれば、個人のスキルに依存せず、組織として安定的に顧客接点を維持できます。
中小企業こそフロントエンドを握るべき
リソースに限りがある中小企業にとって、
このフロントエンド設計は死活問題です。
大手のように広告を大量投下できなくても、
“どこで顧客と出会うか”を明確に設計すれば、
勝機はあります。
オンラインのチャネルと人的アプローチをどう組み合わせるか。
それが中小企業の戦略設計の要になります。
たとえば、
・AIチャットやSNSで関心を持った見込み客を、
人が丁寧にフォローする。
・あるいは、リアルの商談で得た課題感を、
Web上のコンテンツとして再発信する。
こうして“人とデジタルの循環”を作ることで、
小さな組織でも大きなブランド体験を提供できます。
フロントエンドを制する者が、ビジネスを制する
フロントエンドを制する者が、ビジネスを制します。
それは、どんな時代にも変わらない原理です。
顧客が「最初に思い出す存在」になること。
そのための構造をつくること。
時代がAIに移ろうとも、
この基本を外さない企業こそ、これから強くなっていくのだと思います。
