カフェで耳にした営業マンの会話
先日、カフェで客先訪問までの時間をつぶしていたところ、近くの席にいた若い営業マンと思しき2名の男性の会話が耳に入ってきました。
「あの顧客、バカで理解力ないんですよ」
「知識なさすぎて話にならないっすよね」
どうやら営業後の雑談のようでしたが、正直、あまり気持ちの良い内容ではありませんでした。
営業マンだけでなく、コンサルタント、SE、デザイナーといった法人相手のサービスを提供している現場担当者からも同様に、お客様の悪口を聞いたことがあります。
法人向けビジネスの難しさ
たしかに、法人向けの商材は複雑です。技術的な仕様や費用対効果、導入後の運用イメージなど、理解してもらうにはそれなりの時間と知識が必要です。お客さまにとっては初めて触れる分野であることも多く、すぐにすべてを理解してもらえるとは限りません。それはある意味、当然のことだといえるでしょう。
しかし、だからといって「バカ」「理解力がない」といった言葉を使ってしまうのは、営業として非常に問題だと言わざるをえません。
バカと思った瞬間に失われる提案力
なぜなら「この人は理解できない」と思った瞬間から、お客さまの立場に立って考える姿勢が失われるからです。
「どうせ伝わらない」「理解してもらえない」と決めつけてしまうと、説明が雑になり、提案の質も下がります。さらに表情や話し方に苛立ちがにじみ、質問への対応もどこか雑になります。こうした変化は、すぐお客さまに伝わり、結果信頼関係を築くことができなくなります。
言葉は言霊、無意識の態度にも表れる
たとえ冗談のつもりでも、「バカ」「無知」といった言葉は自身の思考や態度に影響を与えます。言葉には言霊があります。相手を見下すような言葉を使えば、自然とその感情が、態度や対応に反映されるようになるのです。言葉が行動を作ってしまうです。
目線や声のトーン、間の取り方など、無意識のうちに現れるリスペクトの欠如は、お客さまにしっかり伝わります。「言葉の選び方」は思っている以上に重要なのです。
営業の敵は「お客さま」ではない
営業の本質は、お客さまと一緒に「課題を解決する」ことにあります。敵は、お客さまではなく、お客さまが抱える「課題」です。
たとえ相手が十分な知識を持っていなかったとしても、そのギャップを丁寧に埋めるのが営業の仕事です。「知らないから教えてあげよう」という上から目線ではなく、「一緒に課題を解決していきましょう」というスタンスが、信頼を生み、成果につながるのです。
しかし、無理な付き合いはしなくていい
とはいえ、すべてのお客さまと無理に関係を続ける必要はありません。中には、こちらが誠実に対応しても、終始横柄な態度をとったり、一方的要求などをする人もいます。
こちらに対して明らかにリスペクトを欠いた姿勢を取る相手に対しては、無理に仕事を受ける必要はありません。ビジネスは対等な関係の上で成り立つものです。仮に受注したとしても、こうした相手とのビジネスはうまくいかなくなることが多いものです。リスペクトのない相手とは、きっぱりと距離を取ることも大切な判断です。
伝えられないのは自分の責任
「バカなお客さま」などという存在はいません。いるのは、うまく伝えきれていない自分です。
どんなに難しい内容であっても、相手の立場や知識に寄り添い、わかりやすく伝える努力を怠らない。そうした姿勢が信頼を築き、長期的な関係につながります。まずは自分の言葉と態度を見直すこと。それが、真のプロフェッショナルとして第一歩です。