先日、一緒にビジネスをやっている友人に、ある取引先に提出する提案書を見てもらった際、「もっとベビーフード化したほうがいいよ!」というコメントをもらいました。私はこの言葉をその時初めて耳にしましたが、非常に納得度の高い表現だと感じました。
現代のコミュニケーションにおいて、特にX(Twitter)、YouTube、Instagramなどの影響で、多くの人が長い文章を読むことや、文章を読んで内容を理解することが苦手になっています。これは、赤ん坊のために大人の硬い食事を柔らかくかみ砕いてあげるのと同じように、複雑だったり少し難しい内容を易しく説明しないと理解してもらえないということを指しています。
ベビーフード化とは?
冒頭の友人の指摘は、私の提案書の文言が、つまり「難しすぎる」というものでした。調べてみると、ベビーフード化という言葉はマーケティングの世界でも使われることがあるようです。具体的には以下のような手法を指します。
- 平易な言葉を使う: 専門用語を避け、誰にでも理解できる言葉で説明する。
- 短いセンテンスにまとめる: 長い文章を避け、要点を簡潔に伝える。
- エッセンスだけを語る: 本質的なポイントに絞って単純化して説明する。
- ストーリーで語る: 情報を物語の形式で伝え、興味を引きやすくする。
- 視覚要素を用いる: 図表やイラストを使って視覚的に理解しやすくする。
ビジネスにおけるベビーフード化の必要性
広告や宣伝の世界だけでなく、いわゆる経営の場面、たとえば提案や報告などのビジネスコミュニケーションにおいても、この手法はますます重要になっています。現代のビジネス環境において、コミュニケーションの効率化による意思決定の迅速化は、企業の成功に直結するからです。昔から年配の方は小さい文字を読むのが苦手なので、役員などへの報告書は文字を少なくするようにと言われてきましたが、上述したように、今ではすべての人に対してこのような配慮が必要になっているといえるかもしれません。
ベビーフード化の限界
しかし、世の中はそんなに単純ではありません。すべての事象を白黒、善悪で明確に分けられるわけではなく、複雑な問題も多く存在します。そのため、ベビーフード化が必要な場面と、詳細な情報や深い議論が必要な場面を見極めることが重要です。また、コミュニケーションのベビーフード化は、短期的には効率的に見えるかもしれませんが、長期的には、本質的な意思疎通の齟齬、問題解決力の低下、ひいては人と人の信頼関係醸成の障害などにつながる可能性もあるでしょう。
コミュニケーションのベビーフード化は、現代の情報過多の時代において非常に有用な手法です。しかし、その適用範囲や限界を理解し、バランスを保ちながら情報を伝えることが重要といえるでしょう。皆さんも改めて、自分のコミュニケーションの質を考えてみませんか?