コラム:DXが「経営者の仕事」なのはどうしてか?

先日、ある「データ管理・分析ソリューション」ベンダーのユーザー会に同席させていただきました。そのベンダー社からの最新機能説明に加え、既存ユーザー企業・見込みユーザー企業の情報システム部門の方々から、各社における活用状況や課題が共有されました。各社とも、データ活用のシステム基盤整備や、収益につなげる分析の考え方などについてはかなり検討が進んでいるようでした。一方で「組織的な取り組みにならない」という共有課題をお抱えでした。今回はそうした「組織的な取り組みにならない」状況の原因について考えてみたいと思います。

 

「データ起点でビジネスを行う」ということは、まさにDXの一つの形態といえるでしょう。私は、こうしたDXが組織に定着しない理由は、「経営者の理解がない」「経営者の本気度が足りない」ことが最大の原因だと考えています。

では、どうして経営者の責任といえるのでしょうか? データ分析DXを例にとって考えてみたいと思います。 言うまでもなく、データは収集・蓄積しただけ、分析しただけでは何の価値もありません。営業や製造などの現場で活用し、売上アップやコストダウンにつながって初めて価値を生むのです。

例えば、営業現場で活用するとはどういうことでしょうか? 売上や顧客データを分析し、そこから顧客の課題やニーズに関する仮説を立て、それに沿って具体的な商品提案を作成し、それを該当する顧客に営業提案するという事です。「この人は今回こういう商品を買ったから、次はああいう商品が必要になるはず」「この人は、こういう年齢になってきたから、そろそろこういうニーズがあるはず」「最近このセグメントの顧客にこういう商品が売れている。だったら類似セグメントの人にも勧めてみよう」などです。こうしたアプローチの中からある割合で受注が取れるわけです。また、勝率の低い提案内容は、見直しを繰り返し、精度を上げていくといったサイクルを回すことを指します。

こうしたデータに基づいたアプローチというのは、ビジネスセンスまたはデータセンスの高い人は自然とできてしまうことが少なくありません。しかし、大半の人はそうではありません。そのままだとセンスの良い人だけがデータを活用し成果を上げますが、組織的に見れば小さな割合にとどまっている状態ということです。

これを組織的取り組みにするにはどうするか?
プロセスに組み込むことが必要です。プロセスに組み込むとは、それをやらないと業務が回らない状態ということです。やってもやらなくても良いというのは、プロセスに組み込んだことにはなりません。逆に言うと、今まで慣れ親しんだ業務をやめて、新業務に賭ける、オールインするという事です。

こういう時に必ず現場から反論が来ます。「これをやって成果が上がらなかったらどう責任を取ってくれるんだ」「自分は従来のやり方で十分成果を上げてきた」などです。実際、新業務による混乱や、成果が出るまでに時間がかかることもあり、必ずしも的外れな反論とは言えないのです。

こうした現場の反論を抑え、DXによる新プロセスを現場に徹底させられるのは、経営者しかいないのです。 プロセス変更による一時的混乱や業績への影響を許容できるのは、経営者だけだからです。そして、プロセスが変わると、それに伴って組織や個人の役割の変更、そして組織や個人の評価についても変更が必要になります。この権限を持っているのは、経営者だけなのです。

「経営改革プロジェクトのプロジェクトオーナーは、経営者またはそれに近い事業責任者であるべき」というのは、経営改革プロジェクトのセオリーです。しかし、お飾りではダメなのです。経営者自身が、新業務の正統性について腹落ちしている必要があるのです。そうしないと、成果がでない場合に日和ってしまうことがあるからです。

DXが経営者マターであることの所以です。

 

<補足1>
とはいえ、急激な全社的プロセス変更はリスクが高い場合もあるでしょう。そんな時は「スモールユニット」での推進も一案かもしれません。
「スモールユニット」とは、既存の事業から独立した、一部の顧客セグメントや商品セグメントに限定して営業~商品提供まで一貫して行う組織単位です。これにより、一連の新プロセスの効果性も検証や課題把握を低リスクで実施することができます。スモールユニットで小さな成功を作り、段階的に全組織に展開するのです。

<補足2>
一方、DXソリューション提供ベンダーとしては、「ツールを売って儲けること」を目的にするのか、それとも「顧客の経営に好影響を与えること」を目的にするのか、スタンスを明確にする必要があります。前者であれば、顧客は「情報システム部門」、後者であれば、真の顧客は「経営者」になります。

 

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