コラム:分業のつもりが「分断」~分業型営業MODELの落し穴

次から次へと担当者が変わり、
フラストレーションが溜まる。。
そんな経験はないでしょうか?

私も、最近そんな事が立て続けにありました。

問い合わせをしたときの担当者、
提案をしてくれる担当者、
契約を進める担当者、
実際にサービスを提供してくれる担当者。

すべて別の人でした。

もちろん、それ自体が悪いとは思いません。
今の時代、分業が進むのは自然な流れです。
けれど、どこかに違和感が残りました。

情報共有がされているような、
されていないような。
話している内容が少しずつ違う。
前回伝えた要望が、次の担当者には伝わっていない。

この会社は、本当にこちらのことを
真剣に考えてくれているのだろうか、
という思いがよぎりました。

 

分業型営業体制

THE MODELという営業の本が
ベストセラーになって以降か、
こうした“分業型の営業体制”を採用する会社が
一気に増えました。
マーケティング、インサイドセールス、
フィールドセールス、カスタマーサクセス。
それぞれが役割を持ち、プロセスを分担して動く。

理にかなっている仕組みです。
効率的で、再現性も高く、属人化もしにくい。

ただ、顧客の立場で見たときは、
少し印象が変わります。
毎回違う担当者が出てきて、
少しずつ温度が違う。
同じ話を何度も繰り返さないとならない。
最終的に「誰が責任を持ってくれているのか」が見えにくい。

分業という仕組みが、知らないうちに
“分断”を生んでいるように思います。

 

なぜ、分断は起きるのか?

従来型の企業でも、同じようなことはあります。
営業が「大丈夫です、できます」と言い、
提供側が「そんな話は聞いていません」と言う。

どちらかが間違っているわけではありません。
見ている指標、追っているKPIが違うのです。
一方は集客数、もう一方は商談数、また別のチームはコスト。
ゴールが異なれば、言葉も行動も変わってしまいます。

オーナーシップの欠如も原因の一つです。
「自分の担当はここまで」という線を引き、
顧客や後続担当者への興味や気遣いではなく、
自分の作業をこなすだけが興味になってしまう。
つまり、無責任体制、みんなが他人事です。

これは、分業という仕組みの本質を
十分に理解できていない
ことに起因するように思います。
本来の分業は、“全体最適のための役割分担”であるはずです。
ところがいつの間にか、“自分の範囲を守るための区切り”になってしまっている。
しかし、それで顧客満足が下がっては元も子もありません。

 

顧客は小さなことに敏感

担当者は分かれていても構いません。
分業の時代ですから、それは当然のことです。
ただ、その全体を見てくれている“コンダクター”
のような存在が必要だと感じます。

実際に登場しなくてもいい。
メールのCC欄に、その人の名前があるだけで、
安心感がまったく違います。
「この人が全体を把握してくれている」と感じられるような
小さなサインが、顧客にとっての信頼の根拠になるのです。

顧客は、そうした細部に敏感です。
誰が全体を見てくれているのか。
誰が最後まで責任を持ってくれるのか。
その存在が見えるだけで、印象が大きく変わります。

 

仕組みでワンボイスを実現する

人の意識や頑張りだけでは限界があります。
情報共有だけでも足りません。
顧客の温度感や背景、判断の経緯。
そうした“文脈”をチーム全体で理解
できるようにする仕組み。

組織、プロセス、そしてKPI。
それが、会社の声をひとつにするための土台です。

皆さんの会社はどうでしょう?
ワンボイスで語れているでしょうか。
営業も提供も、同じトーンで顧客に向き合えているでしょうか。
担当が変わっても、同じ温度で対応できているでしょうか。
提案書やメールの言葉は、会社としての一貫性を感じさせているでしょうか。

顧客が求めているのは、個人の誠実さではなく、会社としての一貫性です。
担当者が誰であっても、同じ考えで、同じ想いで動いてくれる。
それが仕組みとしてできている会社は、やはり強いのだと思います。

 

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