コラム:「強いチームづくり」に足りないもの

理想のチームとはどんなチームでしょうか?

「プロフェッショナル同士が状況に応じて有機的に動ける」
「強いリーダーの下で、メンバーが各人の役割を確実にこなす」
「優秀なメンバーが沢山いて、誰が来てもバラツキなく一定の品質の仕事をする」

そんなイメージをお持ちかもしれません。確かに、そんなチームがあれば、毎日の仕事は楽しく、成果も自然に出るでしょう。

強いプロスポーツのチームは、こんな特徴を持っていますね。

しかし現実はどうでしょう。

「部下が指示待ちで動かない」
「笛を吹いても踊らない」
「報連相がない」
「意欲が低い、上司に協力的でない」

そう嘆く経営者やマネージャーの声の方が多いのではないでしょうか。

 

人材不足を嘆いても解決しない

「優秀な人を採用するのが一番だ」
「ダメな人材は首にすればいい」
「やる気のない人、チームを乱す人は外せばいい」

確かに本質はそうでしょう。大企業ならこうした論理が通用するかもしれません。しかし多くの中小企業や現場マネージャーは、今いるメンバーで戦わなければならないのが実情です。

だからこそ、「現有戦力をどう活かすか」を考えることに集中すべきです。

 

強い組織の基本はコミュニケーション

結論から言えば、強いチームを作るために最も大事なのはコミュニケーションです。

実際に「部下が動かない」と嘆くマネージャーの多くは、部下とのコミュニケーションが不足しています。

コミュニケーションには、次の3つの軸があります。

1. 頻度
2. 質
3. 方向

 

1. 頻度 ― 会う回数を増やす

あるマネージャーから「いくら言っても、部下が全然動かない」と相談を受けました。しかし、詳しく聞くと、部下と顔を合わせるのは月に数回だけ。あとはメールやチャットで指示を出しているとのことでした。

これでは信頼関係が築けるはずもありません。人は顔を合わせて話すことで初めて「信頼できる」「応えたい」と思えるものです。

部下が動かないと感じたら、まずは単純に会う回数を増やすこと。短時間でも毎日の朝会や週次の1on1を習慣化することで、状況は大きく変わります。
オンラインでもやらないよりはましですが、信頼関係の築けていないうちは、直接顔を合わせるのがよいでしょう。

 

2. 質 ― 何を話すのか

会って話はしているが、効果がある感じがしない。そんな場合は「質」が問題かもしれません。

・会社の戦略や方針を提示しているか?
・事業環境や課題を共有しているか?
・今やるべきこと・優先度を明確にしているか?
・個々人への期待値や評価基準を明確にしているか?

あるリーダーは、毎朝の朝礼で前日の仕事のミスやダメな点の指摘を延々としてました。結果、現場は萎縮し、誰も発言しなくなり、トラブルはむしろ増えていったのです。

必要なのは「戦略や背景を共有し、意義を理解させること」「各人の果たすべき役割を理解させること」です。向かうべき方向や自分の責任範囲が分かれば、人は前向きに動けるようになります。

 

3. 方向 ― 対話

そして最後に大事なのが「方向」です。

「俺の言う通りにやれ」という一方通行な指示では部下は思考停止に陥ります。

・「どう思う?」
・「やりにくい点はある?」
・「もっと良くするにはどうすればいい?」

こうした問いかけを通じて、部下が意見を言える雰囲気、心理的に安全な状態を作ることが重要です。

あるIT企業では、会議で「最後に必ず全員が一言発言する」というルールを設けました。最初は形だけの発言が多かったのですが、続けるうちに率直な意見が飛び交うようになり、チームの雰囲気気が劇的に変わったとのことです。

 

「良い人材が来ない」の前に

「ウチには優秀な人材が入ってこない」
そう嘆く経営者は少なくありません。

確かに採用市場は厳しい。しかし、もし社内に良質なコミュニケーションがなければ、たとえ優秀な人材が入ってきてもすぐに辞めてしまいます。
逆に、今いるメンバーとの対話を充実させ、チームとしての成長を促せば、その雰囲気は外にも伝わり、将来的に優秀な人材を呼び込む力になります。

メンバーに「変われ」といっても簡単には変わりません。だとしたら、自分が変わるしかありません。

 

 

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