「コンサル頼んだら会社がぐちゃぐちゃになった」
「偉そうなことばかり言って、結局何もしてくれない」
「高いフィーを払ったのに、効果が感じられない」
経営者の方から、こうした声を耳にすることは少なくありません。残念ながら実際にそのようなコンサルタントが存在するのも事実であり、世の中で最も嫌われている職業のひとつかもしれません。
しかし、私の経験からすると、こうした不満を口にする会社は往々にして自社の経営もうまくいっていないケースが多いのです。なぜでしょうか。
理由は、自社のビジネスが「コンサル」であるという認識を持っていないか、もしくは「コンサルマインド」でビジネスをしていないからです。
すべてのビジネスは「コンサル」である
「いや、うちは製造業だし」「うちは食品を扱っているから関係ない」と思うかもしれません。しかし実は、すべてのビジネスはコンサルティング的な性質を持っています。特に法人向けのビジネスはそうです。
コンサルの本質は「顧客が本当に解決すべき課題を見極め、その実現に必要な仕組みを提供し、定着まで支援すること」です。顧客の言う通りに商品を差し出すことや、顧客に媚びを売ることではありません。本当に必要なものを見極めることこそが価値になります。
例えば、
業務システムを売る場合、それは「システムを導入すること」ではなく「業務効率を改善し、社員の生産性を上げること」が本当の目的です。
広告代理店であれば、「広告枠を販売すること」ではなく「顧客の売上を伸ばすこと」がゴールです。
食品や食材の卸販売でさえ、「発注された材料を納入すること」だけでなく、「食材や卸機能を使って、飲食店の経営やお客様満足の向上に貢献すること」が本当の価値なのです。
つまり「モノを売る」ことがゴールなのではなく、「顧客の問題を解決する」ことがゴールなのです。
「物売りマインド」と「コンサルマインド」の違い
うまくいっていない会社を観察すると、多くの場合「物売りマインド」に陥っています。
物売りマインドの特徴は、こんな感じです。
- 商品を売ればそれで終わり
- 良い商品を作れば顧客は自然に満足するはずだ
- 技術的な優位性こそが価値である
一方で、コンサルマインドは全く逆です。
- 顧客が本当に欲しい結果は何かを一緒に探る
- 課題を言語化し、解決の道筋を設計する
- 商品はその「解決の手段」でしかない
こうした、ビジネスについての認知、アプローチの違いが、「コンサル嫌い」にもつながっているのかもしれません。
そして、この違いは、ビジネスの現場でも如実に表れます。
ある営業現場でのやり取りをイメージしてみてください。
物売り型営業
お客様:「今、在庫管理がうまくいってないんだよね」
営業:「それなら当社のシステムを入れましょう!最新機能が搭載されていて、業界シェアNo.1です!」
コンサル型営業
お客様:「今、在庫管理がうまくいってないんだよね」
営業:「なるほど。具体的にはどんな点でお困りですか?」
お客様:「入荷と出荷のズレが多くて、棚卸しに時間がかかるんだ」
営業:「それは現場の負担になりますね。出荷管理のルールが統一されていないことが原因かもしれません。システム導入はその解決策の一つですが、まずは運用ルールの整理から始める必要がありそうです」
この2つの会話を比べてみれば、どちらがお客様にとって信頼できるパートナーに映るかは明らかです。
脱・物売りマインドの第一歩
では、どうすれば「物売りマインド」から脱却できるのでしょうか。
自分たちの商品をどう売り込むかではなく、顧客が抱える課題と、その課題が解決された先にどんな結果を望んでいるのかに耳を傾けることです。
「いきなり売り込まない」
「自社の話ばかりしない」
この2つを意識するだけでも、顧客との会話の質は劇的に変わります。
今の時代、経営課題も、その解決策も多様化しています。ひとつの商品、ひとつのソリューションが当てはまるということは稀なことです。
ゆえに、物売りマインドから脱却は最優先の経営テーマと言えます。
(以前のコラム: 「課題」把握の質問方法)
意識変革が最も重要な経営技術
もちろん、コンサルスキル研修や評価制度、コンサル型営業プロセスの仕組み化など、経営技術的な施策はさまざまあります。しかし、最も重要なのはもっと根本的な部分です。
自社のビジネスは課題解決である、つまりコンサルである。
という意識です。
そして、こうしたマインドを持った経営者は、自社の経営についても、第三者の視点を歓迎するものです。