コラム:「経営の歪み」の直し方

「グギッ!」「ボキッ!」
「うわっ、痛たたたっ!」

こんな音と悲鳴が響くのは、YouTubeで人気の整体チャンネル。

 

痛そうに腰を押さえて治療院にやってきた患者を一目見て、整体師はこう言います。

「その腰の痛みや頭痛の原因は、“膝の関節のズレ”から来てるんですよ。それが全体を歪めているんですよ。」

そして、数10分の施術後。半信半疑だった患者はこう驚きます。

「えっ?! 20年悩んでた腰痛が、うそみたいに楽になりました!」

 

「本当か~??」と疑いつつも、「自分も見てもらいたい…」とも思ってしまいます。(そして何より、エンタメとして面白い。)

さて、この話。実は経営にもまったく同じことが言えます。

 

経営の「歪み」とは?

これまで数多くの企業と関わってきた中で、「もったいないなあ」と感じる場面にたびたび出くわします。

たとえば──

  • 素晴らしい商品を持っているのに、ホームページからその良さが全く伝わってこない
  • 外国人が多いエリアの飲食店なのに、外国語メニューがない
  • ブランドの広告は華やかなのに、実際のサービス体験が伴っていない
  • サービス部門の受けたクレームがいつまでも商品に反映されず、同じクレームを何度も受けてしまう
  • 営業、製造、マーケティング、経営企画が、同じ課題に対して、似て非なる取り組みを行っている

そういった会社に限って、「うまくいかない」のを商品やビジネスモデルのせいに、新商品を投入したりしがちです。

でもそれは、膝がズレているのに腰だけを揉んでいるようなものなのです。

表面的な痛み(=売上低下、集客不振)に手を打つのではなく、本当の原因を探さなければなりません。

 

経営の「歪み」を生む3つの要因

経営における歪みは、主に以下の3つから生まれます。

1. 組織のサイロ化

部門ごとに目標が分断され、情報が共有されない状態です。たとえば、マーケティング部がSNS広告を頑張っても、営業部はそれを知らず、受け皿となる現場が混乱するといったケース。全体最適ではなく部分最適に陥っています。

 

2. 戦略性の欠如

短期的な数字だけを追い、長期的な方向性を描かないまま日々の意思決定が行われていると、いつの間にか企業全体が「場当たり経営」「バラバラ経営」になっていきます。

 

3. 改善サイクルの不在

色々と試みても、振り返りが甘く、改善のサイクルが回らない。結果として「やってみたけどうまくいかなかったね」で終わってしまい、また新しいことを始めてしまう。それでは、全体の整合をすり合わせるという機会がありません。

 

「経営の歪み」の治し方

腰の痛みの原因が膝にあるように、売上や顧客数の問題も、実は他の部分にあるかもしれません。では、どこを見直すべきなのでしょうか?

1. 顧客の求めているものを再確認する

今、自社が提供している価値は、顧客にとって本当に魅力的なものになっているでしょうか? そもそも、顧客層が変わっていないか確認していますか? 過去の成功体験や、自社視点だけで判断していると、ニーズとのズレが生じます。営業現場の声、カスタマーサポートのフィードバック、SNS上の口コミ──こうした情報から本音を探ることが第一歩です。

 

2. ボトルネックを特定する

売上が上がらないからと言って、それは営業の責任とは限りません。配送品質の問題かもしれませんし、競合商品に性能が劣っているからかもしれません。業績が停滞しているときは、全体の流れを止めている「ボトルネック」がどこかにあります。プロセスの流れをフローチャート化したり、部門ごとにヒアリングしていくことで、意外なところに渋滞があることがわかるかもしれません。

たとえばある製造業では、営業がせっかく案件を取ってきても、設計部門が受け切れず、納期遅延で顧客離れが起きていました。表面上の問題は「営業が弱い」ように見えても、実は「設計のキャパ」が根本原因だったのです。

 

3. 経営者が主導して解決する

組織の歪みは、現場の努力だけでは治りません。なぜなら、調整を行えるのは全体を俯瞰できる立場の人──つまり経営者だけだからです。部門をまたぐ意思決定、戦略の再定義、プロセスの見直し。つまり、ビジネスモデルの歪を直せるのはTOPの意思だけです。

 

経営者にしかできない

企業の痛みや不調の原因は、表面的な場所にはありません。根本原因を特定し、全体のバランスを整えることで、本来持っていたポテンシャルが自然と発揮されるようになります。

YouTubeの整体動画のように、「えっ? たったそれだけで?」というような改善が、企業経営でも起こり得ます。必ずしも大手術が必要なわけではないのです。

ですが、その“施術”ができるのは、組織の全体を理解している経営者だけなのです。

 

 

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