コラム:「やる気がない社員」の取り扱い方

「うちの社員、ほんとやる気がないんですよ」
「指示しないと動かないし、言われたことしかやらないんです」

経営者やマネージャーの方と話していると、こうした言葉を聞くことは珍しくありません。もしかすると、この記事を読んでいるあなたも、常日頃、同じような事を感じているかもしれません。

しかし、「やる気がない」と感じる部下は、本当に“やる気そのもの”がないのでしょうか? それとも、別の理由で動けていないだけなのでしょうかか。今回は、この“やる気がない社員”に見える人たちをどう扱うべきか、そしてやる気を引き出すためにリーダーが取るべき方策について整理してみます。

 

「やる気がない」理由を改めて考えてみる

「やる気がない」と一言で片づけてしまう前に、まず確認すべきことがあります。それは、部下が「何を求められているか」分かっているのか、ということです。

ある会社の役員の方は、こんな話をしてくれました。

「若手に「もっと考えて動け」って何度も言ってきたんだけど、全然改善しないんだよね。やる気がないのかと思ってたんだけど、あるとき雑談の中で、「結局、何やってもダメ出しされちゃうんで、どうしていいか分からないんです」って言われて、ハッとしたんです」

つまり、リーダーや上司側が、事前に“期待値”を十分に伝えていないということなのです。

また、曖昧な言葉が部下を混乱させることもあります。たとえば、「臨機応変に対応して」「先回りして考えて」などの指示は、受け手によって解釈がバラバラです。自分の中では“常識”であっても、それが他者にとっての“分かりやすい行動指示”とは限りません。

こうしたことは、実は若手だけでなく、中間管理職レベルでも起きる現象です。役職上がると、期待される事が抽象的になるからです。

また、外注業者との間でも起きることがあります。いつも発注者の曖昧な指示に翻弄されている外注業者だと、指示があるまで動かないという態度になりがちです。これが「やる気がなく」見えるのです。

 

やる気を引き出す方策

では、どうすれば“やる気がない”社員の行動を変えられるのでしょうか。

 

① やってほしいことを、明確かつ具体的に伝える

抽象的な期待や、雰囲気でのコミュニケーションでは、動けない人も多くいます。だからこそ、「何を」「いつまでに」「どのレベルで」やってほしいのかを、相手の理解レベルに合わせて、丁寧に伝えることが重要です。

口頭で伝えるだけでなく、職務分担表や、メールやチャットで文章として残します。これにより、「言った/聞いていない」の認識違いも減らせます。

 

② 責任と権限をセットで与える

もう一つ大切なのは、「任せる」ことと「指示を待たせる」ことのバランスです。細かく指示しすぎると、やらされ感が強くなります。一方で、「何でも自由にやっていいよ」と丸投げされても、多くの人は戸惑ってしまいます。

任せたい業務に対して、どこまでを自分の判断で進めてよいかの範囲(=権限)を明確に伝えること。それが行動の自由度を生み、やる気や主体性を引き出すきっかけになります。

 

③ 決めた以上のことを要求しない

リーダーの中には、「やってほしいこと一応伝えたけど、それ以上のこともやるのが仕事というのだ」などと考える方もいます。しかし、それでは部下のやる気をそいでしまいます。

最初に取り決めた基準以上の成果を、後から“当然”として求めないこと。追加で期待することがあるなら、それも都度きちんと説明し、合意をとっていく姿勢が大切です。

 

そもそも「やる気」は必要なのか?

ある経営者がこんなふうに言っていました。

「やる気って、極論すればなくてもいいんだよね。やる気がなくても、会社としては、60点の仕事を安定してやってくれる人が、何よりありがたい」

すべての社員が常にモチベーション全開で、イノベーションを起こすような働き方をする必要はありません。むしろ、「決まった仕事を、期待通りにきちんとやってくれる人」がいることが、組織にとっての最大の安定材料になる場合もあります。

それでは、人も組織も成長しないのではないかという反論もあるでしょう。それは、その通りです、60点から先はまた別の領域になります。どう成長の機会を与え、どう評価するのかといった、成長の仕掛けづくりが必要になります。しかし、それも「今、やるべきこと」を確実にやる体制ができてからの話しとなります。

 

やる気を求める前に

「やる気がない」というレッテルを貼る前に、ぜひ問い直してみてください。

・本当に相手はやる気がないのか?
・それとも、自分が伝えるべきことを伝えきれていないのか?

リーダーの役割は、やる気を出させることではなく、やるべきことを明確にすることです。そしてそのうえで、「60点でいい」「これをやってくれたらOK」と明確な基準を示すことが、組織の安定と成長につながります。

 

(もちろん、体調が良くない、プライベートで心配事がある、職場の人間関係が上手くいっていない、全く不向きの仕事であるなどの要因もあるでしょう。それはそれで考える必要があります。)

 

<「コミュニーション」関連のその他のコラム>

<「組織・人」関連のその他のコラム>

<その他 人気のコラム>

<ホームページTOPへ>