「最近、メンバーが自分の話を聞いてくれない」
「指示を出すと、露骨にイヤそうな顔をされる」
「嫌われているんじゃないかと感じて、話しかけるのが怖い」
これは、あるプロジェクトのリーダーが漏らした本音です。
実はこのような悩み、どの職場にも少なからずあります。
新任のリーダーに限らず、ベテランのマネージャーでも、さらにはスタートアップやスモールビジネスの経営者であっても、「チームとうまくいかない」状況に直面することは決して珍しくありません。
なぜ、メンバーとうまく行かないのか?
うまく行かないリーダーには、いくつかの共通する特徴があります。
1.「部下は指示に従って動くもの」という思考
「メンバーは上司の指示に従うべきだ」
そう思っていませんか?
しかし、実際には指示そのものよりも、その背景や意味が伝わっているかどうかが重要です。
現場やメンバー個人の状況を無視し、自分の理屈だけで動こうとしてしまう。
あるいは、顧客との約束をチームに相談もなく一方的に押し付けてしまう。
部下が意見を述べても、「いいから言うことを聞け」と封じてしまう。
こうした態度の積み重ねが、やがて「反発」につながります。
2.朝令暮改の指示
あるリーダーは、こう語っていました。
「昨日言ったことと、今日言っていることが違うってメンバーに指摘されて…。確かにその通りなんですが、でも顧客から急に方針転換を迫られて…」
わかります。リーダーは上司や顧客と、現場との板挟みになりやすい立場です。
ただし、そのまま右から左へ指示を流すのではなく、一度自分の中で咀嚼し、自分の言葉で説明し直す必要があります。
全体を俯瞰して見れていれば、その要求は即時対応が必要ないと判断できたかもしれませんし、代替案を提示することもできたかもしれません。
それができない状態というのは、リーダーに余裕がない証拠です。
その余裕のなさこそが、チームの不信につながっていきます。
3.メンバーを守らない
「 理不尽な要求が来ても、リーダーが受け止めずに現場へ丸投げする」
「 問題が起きたとき、構造や仕組みの課題ではなく、個人のせいにする」
こうした行動、実はメンバーはしっかりと見ています。
「この人は自分たちを守ってくれないんだ」
そう思われたら、信頼はあっという間に崩れてしまいます。
4.メンバーより知識や能力が低い
「この領域は、メンバーの方が経験豊富」
「途中からリーダーとして入ったため、メンバーの方がプロジェクト内容をよく知っている」
こうしたケースは、実際によくあります。
リーダーの知識不足を理由に、バカにするような態度を取るメンバーがいることもあるでしょう。
しかし、知ったかぶりは事態を悪化させるだけです。
むしろ、メンバーの意見を尊重し、素直に学ぶ姿勢を見せた方が、信頼されるリーダーになれます。
5.情報を開示しない
「こんな話をしても、理解されないだろう」
「不安を与えるだけだから、言わない方がいい」
そうやって、リーダーが情報を抱え込んでしまうこともあります。
でも、それは裏を返せば、「チームを信じていない」というメッセージになります。
信頼されていないと感じたメンバーは、やがて自分も心を閉ざします。
信頼は、まずリーダー側から差し出すものなのです。
「朝会」の効果
こうした関係悪化を立て直すきっかけになるのが、短時間の「朝会」です。
「え、それだけで?」と思うかもしれません。
ですが、朝会には、信頼関係を育て直す力があります。
朝会といっても、堅苦しくある必要はありません。
重要なのは、毎朝15~30分程度「顔を合わせて話す時間を持つ」ことです。
以下のような流れを意識してみると良いです。
- 「おはようございます」と、まずは明るく挨拶
- 数分間でもよいので、趣味の話、天気や昨日のニュースなどの雑談
- 各メンバーから、前日までの進捗と今日やる予定(TODO)を話してもらう
- 「ありがとう」「助かったよ」と感謝を伝える
- 「困ってることある?」と必ず尋ねる
- 最後にリーダーから、全体状況や課題の共有
ある企業のリーダーも、最初は「形式的で意味がないのでは」と懐疑的でした。
ところが、実際に3週間ほど続けてみると、最初は無表情だったメンバーが、少しずつ自分から話しかけてくるようになったそうです。
雑談も自然と生まれ、前向きな雰囲気がチーム内に戻ってきた──そんな変化があったそうです。
ポイントは、責めない・詰めないという姿勢です。
「なぜ遅れているのか?」ではなく、
「どこで詰まっている?」「何かできることはないか?」の一言が、空気を変えます。
関係がこじれ切っている時は?
「うちのチームはもっと関係が冷え切っていて、朝会どころじゃない」
そう感じている方もいるかもしれません。
その場合は、無理に自分ひとりで立て直そうとせず、第三者の力を借りることを検討してください。
信頼されている先輩社員や他部署のマネージャー、あるいは外部のファシリテーターなどに入ってもらい、一度「中立な場」を設けるところから始めましょう。
重要なのは、皆が安心して話せる場を構築することです。
抽象論や感情論ではなく、具体的に「今、何が起きていて、どうしたら前に進めるか」を話せる環境を作ることが第一歩です。
良いリーダーとは?
メンバーとの関係に悩んでいるリーダーに、あえてお伝えしたいことがあります。
なんでも知っていて、なんでもできる完璧なリーダーにはなれません。
でも、話しかけられるリーダーにはなれるのではないでしょうか。
そのために、まずは毎朝顔を合わせて、
「おはよう」「ありがとう」と声をかけてみてください。
たったそれだけのことが、チームを変える大きな一歩になります。