コラム:困り者の「勝手にがっかりする上司」

「なんでこれくらいやってくれないんだろう?」
「普通、言われなくてもやるでしょ?」
「それくらい、常識でしょ?」

あなたは、同僚や部下に対して、このような感情をもったことがありませんか? 場合によっては、それを理由に不機嫌になったり、相手にダメ出ししたりということもあるかもしれません。

しかし、これらは“勝手な期待”です。勝手な期待は、行き違いや誤解の原因になりやすく、結果としてストレスや人間関係の摩擦を生む温床となります。期待すること自体は悪くありません。ただ、それを明確に伝えることなく、「裏切られた」「がっかりした」と感じるのは、相手にとっても理不尽であり、関係を壊す大きな要因になります。

今回は、「勝手にがっかりする上司」にならないために、思考のクセやその背景、そして具体的な対策について考えてみたいと思います。

 

「勝手に期待してがっかり」してしまう理由

このように感じてしまうのは、人間の「思考のクセ」が原因です。誰でも陥る可能性があります。

  • 「自分中心」の価値観

    人は誰しも、自分の経験や常識を基準に物事を判断しがちです。
    「自分だったらこうするはず」「普通はこう考えるでしょ」という感覚は、裏を返せば「相手も同じようにすべきだ」という期待となります。これは無意識に自分の「正義」を他人に押し付けてしまっている状態といえます。

  •  相手に対する「甘え」

    信頼している相手だからこそ、「言わなくてもわかるだろう」「察してくれるはず」と期待してしまう。
    しかし、これは実のところ「コミュニケーションの放棄」です。深い関係があっても、察してくれるとは限らないのです。
    ここを勘違いすると、せっかくの信頼関係が壊れる原因になります。

  • 過去の「成功体験」の影響

    以前、指示を出さずとも誰かがうまくやってくれた経験があると、「今回も同じようにやってくれるだろう」と期待してしまいます。
    しかし、それは状況も相手も異なるケースにおいて、再現されるとは限りません。

  • 無意識的な「責任転嫁」

    実は自分がやるべきこと、または自分でも答えがわかっていないことなのに、「分からないのは部下のせいだ」と、無意識的に責任転嫁してしまうケースもあります。
    指示を出す前に、まずは自分の状況を俯瞰的に把握すべきです。自分でも答えが分かっていない問題について指示する際には、その旨を伝える、一緒に考えるようにしたいものです。

  •  日本的な「空気を読む」文化

    日本社会特有の「言わなくても察する」文化、「擦り合わせ」文化が、こうした思考のベースにあるでしょう。
    しかし、グローバルなチームや多様な価値観が共存する職場では、この前提は通用しません。

 

「勝手にがっかり」しないための対策

では、どのようにすればこのような思考の落とし穴を避けられるのでしょうか?

  • 相手のスキル・知識レベルを見極める

    相手が新人か経験者かによって、伝えるべき情報の量や深さは大きく変わります。
    「相手がどこまで分かっているか」を確認することから始めます。

  • 指示はレベルに応じて明確に

    上で確認した相手のレベルに合わせて、アウトプットの目的、求めるレベル、作業ステップ、期限、形式などを伝えます。
    レベルが低ければできるだけ具体的に、レベルが高ければ抽象度を高く が原則です。

  • 途中経過を確認し、方向性を修正する

    一度任せたら放置ではなく、途中でレビューを入れて方向性のズレを早期に修正します。これにより、最後になって「全然違う!」と怒ることを防げます。
    レベルが低ければできるだけ多頻度に、レベルが高ければアウトプットベースで が原則です。

  • 自分でやりたくなっても“引き取らない”

    部下のやり方に不満があっても、すぐに自分でやり直すのではなく、修正方向を明確に指示し、部下が最後まで完遂できるようサポートします。
    自分で引き取った方が速いし品質も高くなるかもしれませんが、それではマネージャーとして失格でしょう。

  • 「分かるだろう」は、分かってもらえない

    「言わなくても分かるだろう」は、分からないものだと心得ておくべきです。伝えなければ伝わらない。それが基本です。

 

部下の立場に立ってみる

特に上司が怖くて話しかけづらいタイプだったり、普段からあまりフィードバックをもらえていない職場では、報連相すら躊躇されるケースがあります。しかし、上司として一番困るのは、「ギリギリになって出てきた成果物が、全く期待と違ったもの」という状況です。
だからこそ、部下に対しても「途中で見せてくれていいよ」「都度確認しよう」と伝えておくことで、ミスコミュニケーションを防ぐことができます。

 

常識は通じない

マネジメントとして難しいのは、”あなた”の「常識」で「動ける人」と「動けない」人が混在することです。しかし、リスクヘッジの観点からは、「常識で動けない人」を標準に考えざるをえないでしょう。
世代が異なれば、「常識」が異なります。また、グローバル人材と協働する場面においても、あいまいな期待や指示は通用しません。文化や価値観が異なる相手には、なおさら明確な説明や丁寧な確認が求められます。

 

思考のクセに意識的になり、「勝手にがっかりしない上司」をめざしまししょう。

 

 

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