「どうして、予定通り進んでいないんだ!」役員が声を荒げ、プレゼン実施者(報告者)がしどろもどろに理由を並べ始める。
他の参加者は黙り込み、寒々しい空気が会議室に流れる──。
いわゆる、会議が「炎上」した状態です。
仕事柄、さまざまなプレゼンや会議に参加する機会がありますが、このような場面に遭遇することは実はまれです。
最近の多くのプレゼンでは、資料も美しく整えられ、説明も流暢で、昔と比べて皆、プレゼン技術が確実に向上しています。
では、どちらが良いのでしょうか。
美しくまとまった「あたりさわりのない」プレゼンと、寒い空気が流れる「炎上した」プレゼン──。
今回は、プレゼンの在り方について考えてみたいと思います。
あたりさわりのないプレゼン
あたりさわりのないプレゼンには、いくつかの典型的な特徴があります。
- 対立点を示さない
- 既知の情報の羅列にとどまり、意見がない
- 「今後検討します」などと結論を逃げる
- 良いことしか伝えない
- 悪い情報を隠す、あるいは触れない
- すべての参加者に配慮しすぎて、責任や時間軸などを曖昧にする
- 抽象度が高い(総論賛成にとどまる)
こうした説明は、一見「上手なプレゼン」という印象を与えます。
プレゼンの場は穏やかに終わるものの、しかし、記憶に残らず、誰も本気で考えず、何も決まらずに終わってしまうのです。
炎上するプレゼンには論点がある
プレゼンにおける「炎上」とは、単なる感情的な対立を意味しません。
冒頭に紹介したような「寒々しい空気」が生まれるかどうかは別として、重要なのは論点が明確に存在し、リスクやデメリットも含めた真剣な議論が巻き起こることです。
たとえば、あるプロジェクトの進め方について、「この方法を取れば短期利益は落ちるが、長期的には市場シェアを広げられる」と提案したとしましょう。当然、短期利益を重視する声も上がるでしょうし、リスクを懸念する意見も出るでしょう。
しかし、対立を恐れずに論点を俎上に載せることで、本質的な意思決定の議論を始めることができるのです。
プレゼンは、意思決定のためにある
プレゼンには大きく分けて二つの類型があります。
ひとつは「意思決定型プレゼン」、もうひとつは「提案型プレゼン」です。
意思決定型は、たとえば社内での新規事業企画案や、社内プロジェクトの結果・進捗報告などが該当します。
これらは、単に良いことだけを報告しても意味がありません。
課題やリスクを明確に提示し、正しい意思決定を促すことが重要です。
一方、提案型は、セールス提案、イベントでのプレゼン、研修での説明などが該当します。
一見、対立点や炎上は不要に思えるかもしれません。
確かに、相手を不快にさせるような炎上は避けるべきです。
しかし、提案型プレゼンの目的が、相手の行動変容であるならば、相手の心の中に課題意識を芽生えさせることは大切です。
そのためには、現状に対する隠れた不安、不満、願望を刺激し、心の中で炎上させることが必要です。
これによって、行動変容に向けた意識の変化を起こさせるのです。
プレゼンテーションの本来の目的は、単にわかりやすく説明することではありません。
意思決定を促し、結果として行動を促すこと にあります。
意思決定とは、何かを選び、何かを捨てる行為です。
そこには必ずリスクと対立が伴います。
だからこそ、あえて論点を提示し、参加者に「どちらを選ぶのか」を問う必要があるのです。
「炎上」を設計せよ
炎上を恐れて、玉虫色の内容に逃げたプレゼンは、存在しないのと同じです。
勇気を持って、対立点を示し、意見を断言し、リスクもメリットもあえて提示する。
「炎上」は意図的に設計すべきです。
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