コラム:間違った「商品」の作り方

「いい製品を作ったのに、なぜか売れない」「すごい高機能なのに、ユーザーが手に取らない」
そんな経験はありませんか?

商品をつくることは、どの企業でも日々行われています。しかし、「売れる商品の作り方」を本当の意味で理解し、実践できている企業は意外と少ないのが現実です。

今回は、多くの企業が陥りがちな“間違った商品づくり”の考え方と、それに代わる視点について考えてみましょう。

 

「商品=製品」ではない

まず押さえておきたいのは、「商品」と「製品」は同じではないということです。

製品とは、社内にある在庫や技術の塊のことで、お客様の視点は含まれません。

一方、商品とは、「お客様が欲しいと思い、実際に買いたくなるもの」です。
企業が“作ったモノ”ではなく、「お客様が“選ぶモノ”」であるという視点が付加されています。

さらに言えば、商品とは“モノ”ではなく、「お客様との対話の中で育つ、価値のかたまり」と、私は考えています。

それは完成品ではなく、やり取りの中で磨かれ、意味づけされ、ようやく「買いたい」と思ってもらえるものに育っていきます。

たとえば、まったく同じスペックのペンでも、「手帳にぴったりの細さ」「サインがきれいに書ける」など、伝え方ひとつで商品の魅力は大きく変わります。
“誰に・何を・どう伝えるか”によって、商品になるかどうかが決まるのです。

 

作って終わりではなく、市場で育てる

商品づくりにおいてよくある誤解が、「完成させてから市場に出すべき」という思い込みです。

もちろん、食品や電化製品など安全性や機能が重要な商品では、一定の完成度が求められます。しかし、特にサービスやB2B商材においては、「完成度」より「市場との対話」が重要です。

最小限のコア機能だけでまず市場に出し、お客様の反応を見ながら改良していく。こうした“育てる”視点が、今の時代のスタンダードになりつつあります。

実際、多くの優良企業では、商品を出した後も改善を続けています。
発売直後にマイナーチェンジされた家電製品などが、その好例です。

 

完璧を目指すほどハマる悪循環

慎重に開発しようとすればするほど、市場投入のタイミングが遅れ、次のような悪循環に陥るリスクがあります。

市場投入が遅れる
⇒他社に先を越される
⇒お客様の期待値が上がる
⇒想定外の機能追加が必要になる
⇒開発コストが増え、さらに投入が遅れる

このスパイラルを断ち切るには、「ミニマムな状態」でまず出すことが効果的です。
いわゆるMVP(Minimum Viable Product)という考え方がこれに当たります。

 

”セールスコピー”から始める商品開発

少し大胆な考え方ですが、「どう売るか」「どう伝えるか」から商品を逆算して設計する方法もあります。

たとえば、「最短3日で導入できる新サービス」とキャッチコピーを決めてから、それに合わせた機能構成を考えるというアプローチです。

このようにセールスコピー起点で考えることで、社内の複雑な調整や技術的なこだわりをそぎ落とし、本当に必要な価値だけに集中することが可能になります。

 

”商品”の再定義

まとめると、商品とは「作るもの」ではなく、「お客様とのやり取りの中で育てるもの」と再定義することが必要です。

“モノ”としての完成度ではなく、“意味”や“体験”としての価値がどう伝わるかが、商品の本質です。
だからこそ、「商品=価値のかたまりであり、対話の中で磨かれていくもの」という視点を持つことが重要です。

その視点に立てば、開発も、販売も、マーケティングも、変わり始めます。
“商品”という言葉の再定義が、ビジネスの成長の第一歩になるかもしれません。

 

 

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