コラム:成功するビジネスモデルの作り方

「あの会社のビジネスモデルはユニークだ」「あの会社の成功はビジネスモデルが秀逸だからだ」。
古今東西、いろいろな成功したビジネスモデルが存在します。フランチャイズやリースといった昔ながらの手法から、コンビニエンスストアやSPA(製造小売業)、カンバン方式などの日本発の仕組みもあります。最近では、クラウド、サブスクリプション、オンラインサービス、プラットフォーム型ビジネスといったものが注目されています。今回は、どうしたら成功するビジネスモデルを作れるのか考察してみます。

 

ビジネスモデルづくりは、いくつかのフェーズに分けて考えることができます。まずは、各々の中味を見てみたいと思います。

企画
顧客や競合や他業界の事例などを分析し、ニーズと差別化の観点から魅力的なビジネスモデルを企画する。論理上は収支とれそうだし、社内の上層部の受けも悪くない。。。。
この段階は、自由な発想が許され、夢の広がる楽しい時間です。企画の妙味は、まだ現実の制約に縛られず、紙の上であらゆる可能性を描ける点にあります。
実は、経営者や企画部門の担当者の中には、「企画」が出来上がると、明日にも新しいビジネスモデルが動き出すような感覚になる人も少なくありません。もちろん秀逸なビジネスモデルの企画を作ることは非常に重要なことです。これがなければ何も始まりません。しかし、「企画」はあくまで“出発点”であり、ビジネスモデルづくりの長い道程の10%くらいに到達したに過ぎません。

 

実装・構築
企画の後には、「実装・構築」という現実的なステップが待ち構えています。具体的には、商品やサービスの見直し、業務フローの再設計、新しい営業手法の導入、担当部署の立ち上げなど、実に多岐にわたります。企画段階では異論が出なかったにもかかわらず、実装段階に入ると、さまざまな現実的な問題が噴出します。たとえば、技術的な制約により企画通りの商品が作れない、システム開発の費用が想定を超える、既存商品との競合を懸念して営業部門が非協力的になる、人材が確保できない――こうした壁が次々と立ちはだかります。

このフェーズでは、企画と現実のギャップを地道に埋めていくことが求められます。多くの調整ごとや軋轢に耐えながら、一歩ずつ前に進むことが求められます。このフェーズでは通常、企画フェーズよりはるかに多くの人が関わることになります。企画時のコンセプトが理解されず、似て非なるものが出来上がる可能性もあります。企画の意図を理解しつつ、現場の課題を泥臭く解決し、推進するリーダーが重要です。本来「企画者」がこのフェーズでもしっかり関与し、コンセプトと現実の調整をマネージするのが理想ですが、得てして「企画者は実行が苦手」なことも多く、結果、中途半端なビジネスモデルが作られることも少なくありません。

 

運用
ようやく実装・構築が完了しても、それで終わりではありません。むしろ、ここで全体の60〜70%が終わったに過ぎないのです。
その後は、いよいよ運用フェーズが始まります。ここでは、想定外のトラブルが日常茶飯事です。集客が伸びない、売上が思ったように上がらない、システム障害や人的ミスによるクレームなど、現場は対応に追われます。実装時のトラブルと違い、運用中のトラブルは顧客に直接迷惑をかけてしまう可能性があり、結果として顧客離れやブランドの毀損といった重大な経営リスクに発展します。だからこそ、運用フェーズでは「機敏な対応力」と「日々の改善意識」が何よりも重要となります。言い換えれば、ここからが“本番”です。ビジネスモデルの本当の価値は、どれだけお客様に喜ばれるか、受け入れられるか依存するのです。

 

その後
では、こうした苦難を乗り越え、時には、世間から「成功モデル」として取り上げらたら、それでハッピーエンドなのでしょうか? 実は、そうではありません。

たとえば、少し前にこのコラムで紹介した「ワークマン」は、「ワークマン女子」が大ヒットして注目を浴びました。しかし、時間の経過とともに、本来の主要顧客であった建設作業者の離反を招くようになりました。そこで同社は先日、路線を見直し、「ワークマン女子」を「ワークマンカラーズ」に刷新し、再びガテン系男性をターゲットに据えると発表しました。

この事例が示すように、完璧なビジネスモデルというものは存在しません。仮に一時的に完成されたように見えても、市場や顧客は常に変化し、やがては模倣されたり飽きられたりしてしまいます。

ここから言えるのは、ビジネスモデルを成功させる本質とは、「完成されたモデルをつくること」ではなく、「市場の変化に応じて柔軟にモデルを変え続けられる組織能力」にあるということです。

 

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