コラム:「しない」で儲ける ビジネスモデル

先日、「ワークマン式『しない経営』」という本を手にしました。著者は、建設用作業着販売を中心とする小売業「ワークマン」のCIOの方。ワークマンがどのようにして「しない経営」を実践し、変化を遂げてきたのかが具体的に書かれており、非常に感銘を受けました。ビジネスモデルの再構築を支援する立場として、「しない」「やらない」という視点は、戦略を見直す上で極めて重要だと考えています。ワークマンは、まさにその好例です。今回は、ワークマンの「しない」ビジネスモデルについて考えてみたいと思います。

 

ワークマンについては多くの方がご存じかと思いますが、念のため簡単に紹介します。

  •  「建設業向け作業着」小売りの独占企業
  •  大手スーパー「ベイシア」の一部門として1980年に設立。82年以降、関連会社として運営
  •  2018年頃から作業着のカジュアル市場への横展開に成功し、事業を拡大(ここ数年は若干停滞)
  •  1000を超える店舗で、売上規模は1600億円。東証スタンダードに上場

 

ワークマンのビジネスモデルは、「しない」ことを積み重ねることで低コストと顧客からの支持を両立し、競争優位を作りだしています。

商品:作業着しか売らない

  • 商品を拡大しない(アウトドア市場に展開したが、これまでの作業着商品をそのまま投入)
  • デザインを変えない(ファッション商品ではないので、複数年に亘った販売する前提)
  • 高機能・低価格に徹する(ファッションブランドのように粗利を追わず、プロ向けの品質と低価格を重視)

 

マーケティング:マス広告をしない

  • マス広告をしない(TVCMをやめSNSやインフルエンサー施策に特化)
  • 顧客管理をしない(ポイントカードや会員制度を導入しない) → 顧客情報管理のコスト削減、セキュリティリスクの回避

 

販売:店舗オペレーションをしない

  • 直営店を持たない(フランチャイズ展開が基本。ただし、本部からのノルマなどはなし)
  • 値引きをしない(プロ向け商品なので、定価販売を徹底)
  • 接客をしない(定番商品中心のため基本接客は不要。必要な場合は、POPなどで説明)
  • 閉店後のレジ締めをしない(昼間にレジ締めを行うことによりスタッフが早く帰宅できる)

 

立地:ショッピングモールに出さない

  • 建設作業者が、現場への行き帰りに車で気軽に寄れるロードサイドに出店
    (ただし、カジュアルブランドのワークマンプラスは、ショッピングモールに出している)

 

EC:配送をしない

  • 店舗受け取りを前提にする(配送コストを抑え、店舗への来店促進)

 

仕入れ:取引先を変更しない

  • 取引先を頻繁に変更しない(長期取引を基本とし、切り替えコストを削減)
  • 在庫リスクを持たない(仕入先が需要予測を行い、納品された商品を100%買い取り)

 

ワークマンは、「建設作業着」という安定市場に特化 し、オペレーションを徹底的に効率化することで高収益体質を築いています。また、アウトドア向け市場に展開する際も、従来の作業着そのものを「アウトドア用商品」として投入し、リスクを最小限に抑えているのも特徴です。

多くの企業は、顧客ニーズの多様化に合わせてサービスを増やしがちですが、これはオペレーションの複雑化を招き、管理コストの増大、サービス品質の低下、人材確保の難化 といった課題を引き起こします。

ワークマンは、「しない」ことによって、価格の優位性とサービスの品質向上を両立する という成功例といえます。ただ、単に一部の業務を削減するだけでは成功しません。「しない」経営は、商品・販売・仕入など、ビジネスモデル全体の整合性が求められる 高度な戦略です。しかし、それが実現できれば、企業成長の強力なドライバーとなることは間違いありません。

 

尚、ワークマンには、上述のビジネスモデルだけでなく、組織運営においても独特の「しない経営」の考え方があり、これが近年の成長を支えているといえそうです。この点については、別の機会に詳しく考えてみたいと思いますが、ビジネスモデル以上に示唆に富んだ内容です。

  • 社員のストレスになることは「しない」 (短期目標、ノルマ、根性主義 などがない)
  •  ワークマンらしくないことは「しない」 (アパレル企業にならない)
  •  価値を生まない無駄なことは「しない」 (会議、根回し、社内行事など を極力行わない)
  •  BIシステムを使わない=「エクセル経営」(社員全員がエクセルを使ってデータ活用を行い、データドリブンの企業を目指す経営)

 

是非ご一読をお勧めします。

ワークマン式「しない経営」――4000億円の空白市場を切り拓いた秘密

 

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