先々週のブログで「面倒な人との付き合い方」について書いたところ、多くの方から反響をいただきました。その中で、「上司がいつも不機嫌で、仕事がやりにくい」という「面倒な人」のパターンをいただきました。皆さんの職場にもいつも「不機嫌」で、話しかけづらい上司がいるではないでしょうか。(読者の皆さんはそういう上司ではないと思います。。)今回は、そうした「不機嫌なボス」への対処方法について考えてみたいと思います。
「不機嫌」と一言でいっても、その背景にはさまざまな事情があります。体調が悪い、プライベートで嫌なことがあった、仕事に集中したいときに話しかけられた……こうした一時的な不機嫌であれば、ある程度は仕方がないかもしれません。
しかし、特定の部下やすべての部下に対して常に不機嫌な態度をとる上司もいます。こうした上司は、明確な指示や建設的なフィードバックではなく、「不機嫌」という態度を使って部下をコントロールしようしていると考えられます(たぶん無意識的に)。これは職場におけるモラルハラスメント(モラハラ)の一種といえるでしょう。
モラハラには、次のような種類があります。いずれも、言動によって相手を貶め、支配しようとする態度・行為のことを指します。
- 言葉による攻撃・人格否定
- 無視・冷たい態度・軽視・孤立化
- 過度なプレッシャーや過度な業務量の押し付け
- 過小評価・成果の横取り
- 地位を利用した威圧
- 矛盾した指示を出し、相手を混乱させる(ダブルバインド)
- 陰口・悪評の流布
- 事実の歪曲や記憶の改ざん(ガスライティング)
- 意図的な昇進機会や活躍機会のはく奪
暴力や罵倒のような分かり易いパワハラへの視線が厳しくなった現在、表に見えにくい「モラハラ」による被害は増えていると思われます。そして、「不機嫌」も、これらのモラハラの一種といえます。例えば、「訊かれても返事をしない」「回答せず「お前はどう思うんだ」と質問で返す」「部下からの報告にただため息をつく」「ただ黙って威圧的な態度を取る」、「「分かってねーな」と否定しながら答えを言わない」、「答えがないので自分のやり方を通そうと思うと、更に不機嫌になる」などが挙げられます。
これに対処するにあたって、大前提として「「モラハラ」は許される行為ではない」「モラハラする側が悪である」という認識を持つことが重要です。
たとえ自分の仕事のパフォーマンスが上司の期待に届いていなかったとしても、不機嫌やモラハラで支配していい理由にはなりません。この認識を持たないと、モラハラをする相手との心理戦に負けてしまうのです。(モラハラは特定の相手に対して行われる行為なので、実際どんなに良いパフォーマンスを出してもそれが止むことはありません)
モラハラをする人は、相手の弱みにつけ込む傾向があります。
特に、次のような特徴を持つ人はターゲットになりやすいといわれています。
- 真面目で融通が利かない
- 自己主張が苦手
- 自信がない、気が弱い
- 他人の評価を過度に気にする
こうした人は、上司の不機嫌な態度を「自分が悪いせいではないか?」と考え、委縮してしまいがちです。時には、精神的に追い詰められメンタルを病んでしまうことも少なくありません。
逆に、モラハラを受けにくい「マインド強者」の特徴を知ることは、対策を考える上で役立ちます。
- 自信がある
- 自己肯定感が高く、相手の評価に振り回されない
- NOと言える
- 責任の範囲を明確に整理している(「これは自分の問題、あれは相手の問題」と区別できる)
- 視野が広く、代替案や相談相手を持っている(特定の上司やアイデアに依存しない)
モラハラする上司は、心理的に支配できそうな相手を選びます。そのため、「この人は簡単にはコントロールできない」と思わせることが、一番の対策となります。
あまりにひどい場合は、上司の上司やしかるべき内部の組織または外部の団体に通報する必要があるかもしれませんし、会社を移るという選択肢もあるでしょう。しかし、それらは事態を「重大化」することになり、「今の仕事を充実してつづける」という目的に照らすと実質的なメリットが少ないでしょう。ですから、まずは、目先で対処する方法を探ってからでも遅くはありません。
そのためには、繰り返しになりますが、
「モラハラは許される行為ではない」という認識を持ち、「この人は簡単にはコントロールできない」と思わせることが重要なのです。
このコラムを読んでいただいている方の中には、部下を持つボスの立場の方もいるかもしれません。もしあなたが上司なら、「不機嫌」という態度で部下をコントロールすることは絶対に避けるべきです。相手の尊厳を傷つけることは、チームの生産性を低下させるだけでなく、場合によってはハラスメントとして法的問題に発展する可能性もあります。もっと言えば、不機嫌な上司に優秀な人や情報は集まりません。ゆえに、マネジメントとしての資質に疑問符が付くと言わざるを得ません。
※この記事を書く直前に、アメリカのトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の交渉決裂事件が起きました。最終的な結末はまだ分かりませんが、ゼレンスキーはあの場面では、”不機嫌なボス”を相手に正しい対応をしたと言えるような気がします。