コラム:従業員モチベーションアップのツールとしての「改善提案」

従業員や部下のモチベーションアップは、経営者・マネージャーにとって切実な課題です。経営者などはもともとモチベーションが高いから経営者になっているわけで、モチベーションが「ない」「低い」社員というのは理解しがたい、受け入れがたいことかもしれません。しかし、社長だけでできることは限られており、社員にモチベーション高く働いてもらうことはビジネスの成功要因の一つといえるでしょう。

 

昨今、「1 on 1ミーティング」という手法が広く使われるようになっています。これは、上司と部下が1対1の定期的なミーティングを行い、部下の悩みや課題を共有することで、モチベーション向上を図るものと言われています。しかし、実態は上司が部下にダメ出ししたり、詰めたり、または当たり障りのない雑談をするだけの会になってしまっているケースも少なくありません。さらに、部下を多く抱える上司にとっては、忙しいマネージャー業務の中で1on 1に多くの時間を割くのは負担が大きいでしょう。また、必ずしもすべての部下が、悩みや課題を率直に話してくれるとも思えません。上司や年上の人の前で、自己表現が苦手だったり、不安を感じたりする人は少なくありません。

 

私は、最大のモチベーションアップのカギは「じぶん事」化にあると考えています。
パーソンナルな悩みや体調不良などを除けば、業務に対して当事者意識を持てていないことが、やる気がでないことの最大原因ではないでしょうか。

業務を「じぶん事」として捉えるには、自分の仕事に対して”主体的”な関心を持つことが不可欠です。
通常の業務は上司や会社から与えられるものであり、多くの人にとっては受け身的な作業になりがちです。主体的な関心を持つようになるためには、自分の業務を一歩引いても観察して、「もっと高い効果を出すためには」とか、「もっと効率的にするには」といった事を考え、それを実行し、結果が付いてくるといった成功を経験をすることが重要なのです。つまり、「自分なりの改善案を考え、実施すること」です。

 

お客様に提案できるモチベーションアップの仕掛けが何かないかと考えていたところ、実は近しいツールがあったことを思い出しました。
かつて筆者は製造業の工場に勤務していました。今はどうか分かりませんが、当時工場ではQC活動(品質改善小集団活動)が盛んでした。これは、職場ごと小さなグループ(課、チーム)が、自分の職場の改善課題を議論・改善をしていく活動のことです。(もともとの定義としては、「自主的」な活動という定義の様ですが、実態は業務の一部として行われていました。)その一環として、「改善提案」というものもあり、こちらはグループではなく、個人が改善案を提出するというものでした。

当時は月5件などのノルマがあり、非常に面倒に思っていましたが、改めて考えると、上手く使えばモチベーション向上のツールとして機能するのではないかと思い至りました。

 

ルールはこうでした。

  • 自分の業務に関わる課題と改善案を、毎月数件提出する義務がある。
  • 自分だけでは改善できないものでも、他の担当者や関連部門を巻き込まないとならないのでも良い。(自分自身で改善できるものは即時実施。)
  • 改善効果を、定量的・定性的に試算する必要がある。
  • 部門内の上長承認の後、全社とりまとめ部門に送付され、必要なものは全社に共有される。
  • 良い提案には、商品券などのリワードがもらえる。

 

これの良いところは、以下の様な部分です。

  • 提出が義務となっている。(シャイでも、無関心でも出させられる)
  • 言語化による頭の整理ができる。文書なので、上司に面と向かって詰められたりしない。
  • 誰かへの批判ではなく、業務課題にフォーカスし、前向きな改善案を考える規定のフォーマットになっている。
  • 課題や改善策にオーナーシップが生まれる。
  • 自分の提案が、事業所や全社レベルの大きな改善につながる可能性がある。

このまま使えるとは思いませんが、トップダウンで指示をしたり管理をするだけなく、ボトムアップの提案を推奨することで、業務への関心を高める効果があるのではないでしょうか。

 

では、仮にこうした仕組みができたとして、マネジメントとしてはこれをどう運用すべきでしょう。

  • 提案内容を放置しないこと。採否にかかわらず、提案の最終結果を共有し、不採用の場合はその理由も明示する。
  • 提案者の心理的安全性を確保すること。提案内容を批判したり、提出を思いとどまらせたりしない。
  • 仮に、提案がマネージャーにとって不都合な内容であっても受け入れること。
    などが必要です。

いずれにしても、トップダウンだけでは経営は成り立ちません。経営参画意識の高い従業員を育て、自走する組織をつくることもマネジメントの大切な仕事です。モチベーションを個人の資質や気分に委ねるのではなく、「仕組み化」を考えてみるのはいかがでしょう。