コラム:AIのコモディティ化が始まった!

最近いくつかのIT系の展示会を見て回る機会がありました。展示会の見学は久しぶりでしたが、数年前とは大きく様変わりし、今年はまさにAI一色の状況でした。今回はそんな中で感じたことをいくつか書きたいと思います。

 

1つ目は、「AIはすでにコモディティ化の段階に入った」ということです。

例えば、「問い合わせ回答AI」というものを多くの企業が展示していました。
これは、お客様や社内からの問い合わせに対してチャットボットが回答する仕組みで、我々が日常的に使うサイトでも使われるようになってきています。
以前は裏側に想定問答集のようなデータをあらかじめ用意し、その中から答えを探して回答するものが主流でした。しかし、「回答AI」では裏側で持つデータがバラバラでも、AIが判断して、適切な回答を作ってくれます。

技術的には、①必要なデータだけを「RAG」といわれるプライベートのデータ環境に格納。エンジンだけChatGPTなどを使って問い合わせに回答するというものす。(ChatGPTなどがもともと持っている外部公開データと混ぜないことでデータセキュリティを確保するのがポイント)。②”必要なデータ”は、ワードやエクセルやパワーポイント、さらにはPDFや単なる画像データでも構わず、想定問答集も不要というところです。

展示されていた各社のツールは、コアの技術はほぼ一緒という印象を受けました。そうなると、差別化はユーザビリティとか、詳細検索ロジックのチューニングなど、細かな部分になってきているようです。競争激化に伴い価格もかなり低くくなってきており、淘汰もすすみそうです。今後は機能よりも組織内にどう定着させるかという部分がカギになると感じました。

 

2つ目は、「AIの適用領域がどんどん広がっている」ということです。

データの活用は一般的に、「元データ収集」「元データ整理(クレンジング)」「複数元データ統合」「データ分析(事実抽出)」「データ分析(解釈)」「予測」「提案」という流れになっています。これまでのAI では、「データ分析(事実抽出)」「データ分析(解釈)」が中心で、そのため”キレイ”な元データをあらかじめ用意する必要がありました。しかし先述の通り、元データに多少の欠陥があってもAIが補完する技術が進化しており、元データの内容にあまり神経質にならなくても良くなってきています。またRAG技術等の進化によって、「データ分析(解釈)」「予測」「提案」という部分もAI化が可能になってきたといえるでしょう。

システム開発の分野では、日本語で書いたシステム要求から業務システムを自動生成するツールや、古いプログラム言語で書かれた既存システムのソースコードを投入すると新しい言語の新システムのコードの書き直してくれたりと、これまで人海戦術だったシステム開発業務が様変わりする兆しが見えました。事務業務やシステム開発業務だけでなく、製品開発や生産や物流といった領域でも様々な活用方法が提案されていました。

 

「どう使うの?」「実務では使えない」という時期は過ぎつつあります。多くのIT技術がそうだったように、これからは静かに深く普及が進んでいくと思われます。
これは特に、人材採用が難しく、人件費や人員リスクの課題を抱える中小企業にとっては、実は朗報といえるのではないでしょうか。

当社も、効率化・省人化をテーマにコンサルティングを行っておりますが、もっとAIの活用を前提にクライアントの業務モデル見直しを行っていかないといけないと感じました。

皆さんの会社でも、AIを前提としたビジネスモデルを検討する時期にきているのではないでしょうか。