最近複数のクライアント先で、「顧客の課題」について議論する機会があった。
あるクライアントの経営者は、「うちの営業担当者は、顧客と経営課題について話ができない」「うちのSEは、顧客のいいなりで、本質的な課題改善案を提示できない」というようなコメントをしていた。どんな企業でも個人でも「課題」は抱えているはずなのに、どうして「課題」を把握したり、理解したりすることが難しいのであろうか。今回は、「顧客課題」について考えてみたい。
課題は、大きく分けると「顕在課題」と「潜在課題」に分類することができる。
顕在課題
読んで字のごとく、すでに表面化している課題である。
企業であれば、コストの増大、プロジェクトの炎上、従業員の大量退職、などが例である。
これらは、「目の前で火事が発生している」みたいな状態であり、早急な「消火活動」が必要であるのは言うまでもない。
例えば、経費一律カット、優秀人材のプロジェクト大量投入、給料一律Upなどの対処療法である。
顕在課題の裏にある潜在課題
しかし、「消火活動」は本質的な打ち手とは言えない。顕在課題の裏にはもっと構造的な課題が存在することが大半である。
上の例でいえば、無駄なコストを発生させている業務プロセス、プロジェクト管理の欠陥、働き甲斐や労働環境の悪さ などである。
できるビジネスパーソンであれば、目先の消火活動を行いながら、こうした構造的な課題にも同時にアプローチするであろう。
潜在課題
潜在課題は、文字通り「表面化していない潜っている」課題である。言い換えると「リスク」である。
これらはまるでマグマのように地中に潜んでおり、何かのきっかけで噴出するような類のものである。
例えば、個人情報の流出、ハッキング、天災によるサプライチェーンの分断などである。これらが顕在化すると、企業活動に大きな影響を与える。対処すべき本質的な課題は、個人情報管理体制やセキュリティの不備、サプライチェーンの冗長性欠如などである。
潜在課題にもなっていない潜在課題
良く言われることだが、「課題とは、「あるべき姿」とのギャップ」である。
とすると、「あるべき姿」が変わると、現状を抜本的に変える必要がある。つまり、すべてが課題となる可能性があるのである。
例えば、変化する市場に合わせて現状のビジネスを変える、飛躍的なビジネス拡大にためにビジネスモデルを再構築するなど、経営者レベルの課題の多くがこれに当たる。しかし経営者といえども、自分の「あるべき姿」を認識し、言語化できている人は多くはない。あるべき姿が定義できていない以上、課題が明確になっていないのは当然である。
さて、最初の「顧客課題の理解」に話を戻す。顧客企業と一口で言っても、現場担当者から経営者まで様々な層の人たちがおり、企業自体の置かれた状況も、イケイケ成長から衰退モードまで様々である。まずは、目の前の顧客がどんな層の人なのか、企業がどんな状況にあるのかを把握し、それが上記のどの課題パターンに当てはまるのかを整理することが、顧客課題理解の第一歩になる。特に「あるべき姿」が明確になっていない場合には、課題を議論する前に、「あるべき姿」を一緒に議論することから始めたい。
みなさんの顧客の課題はどのパターンに当てはまるだろうか?