マスター」とは、情報システム内で保持される事前設定の基本情報を指す。たとえば、われわれが通販サイトで買い物をする際、郵便番号を入力すると自動的に住所が補完される。また、検索キーワードに応じて商品リストが提示される。これらはすべて「マスター」情報が事前に設定されているからである。
ここから本題に入るが、経営管理と「マスター管理」の関係について論じたい。
経営管理とは、極論すれば、企業が儲かっているか、または将来的に儲かりそうかをモニターし、問題があれば是正行動を起こすことである。
まず、最も重要な管理対象は「お金」=財務である。これには、実績と予測という二つの数値が存在する。実績とは、売上や入金が予定通りに行われたか、費用が適切に使われたか、過去の情報を確認することである。一方、予測とは、来月の売上や、年度末の最終利益のなど、将来の見込みを想定し、それをもとに必要な行動を取れるようにすることである。
次に、お金以外の要素を管理する必要がある。これはKPIやプロセス指標と言われる数値である。たとえば、集客数や購入率(CR)は売上に直結する重要なKPIである。人時生産性や離職率は業務や組織の健全性を評価するための重要な指標となる。
しかし、上記のような数値の全体集計だけを見ているのでは、管理としては粗すぎる。社内のどこに問題があるのか、どの市場が成長しているのかといった詳細を解像度高く把握することはできない。そこで、「セグメント」という概念が登場する。すなわち、これらの数値をさらに分解して考察するということである。
B2BとB2Cでは異なる要素もあるが、一般的には製品、顧客、社内組織の三つのセグメントで考えることが多い。
- 製品セグメント:
製品の基本情報(製品コード、製品種別、用途など)、その他の補足情報(商品の特性(エコ商品、プレミア商品)など) - 顧客セグメント(B2B):
顧客の基本情報(顧客コード、所在地、業種、規模、企業年齢など)、その他の補足情報(グループ企業、社長の特性、過去の取引履歴など) - 顧客セグメント(B2C):
顧客の基本情報(名前、住所、年齢、職業、収入など)、その他の補足情報(嗜好、趣味など)。 - 社内組織セグメント:
売上や費用の発生部署(組織コード、組織種別〈営業部門、生産部門など〉、所在地など)。
これらのセグメント情報を用いて、財務やKPIの数値を縦横に分解・集計することで、市場のトレンドや営業上の問題点をピンポイントで把握できるのである。
こうしたセグメント情報はすべて「マスター」にあらかじめ設定される(最初に不明な情報は徐々に追加される。また購買履歴などによって随時更新される項目もある。)。マスターに設定されていないセグメントは分析も管理もできない。したがって、何を管理し、分析したいのかから逆算して、マスターに保持すべき情報を定義する必要がある。
経営管理が「マスター管理」であることの所以である。