コラム:組織内での「力」の源泉

”組織を動かす”時、”組織を変える”時には、権力・権威のある人の力・協力が必要です。
権力・権威というとおどろおどろしい感じもしますが、どんなに小さな企業でも、非営利団体でも、組織にはすべからく存在するものです。
経営変革コンサルティングの現場でも、クライアント組織内の誰が「力」を持っているのかを素早く見極め、その人物の協力を得ることが変革の成功要因のひとつです。コンサルティングでなくても、客先内のキーパーソンの把握は、商売上の重要な要素といえるでしょう。組織の上位にいても権力がない人もいれば、組織階層は高くないけれども、組織に大きな影響を与えるという人もいます。
今回は、そんな権力・権威の源泉ということについて書いてみたいと思います。

権力の源泉は、ひとことでいうと「重要リソースの掌握」です。

リソースとは、具体的には「人」「金」「客」「物」「情報」です。


人材は組織活動の中心です。誰をどの部署や案件に配置するのか、評価や昇進をどうするのか? 広い意味の人事権です。
こうした「人」に関わる権限を持っている人に権力は集まります。特に、人そのものが商品となるサービスビジネスでは、人材を差配できる人に強い権力が発生します。

ちなみに、「権限」は組織内で正当に認められた力です。「権力」は実質的な力であり「権限」を伴わない場合もあります。


投資や会社全体の戦略方針、つまり「金」に関する差配を決定をできる権限を有する人にも権力は集まります。社長などの経営者は言うまでもありませんが、社長の実務実行部隊である、秘書室や経営企画といった部門がこのような位置づけになることが少なくありません。

また、社内の「稼ぎ頭」に権力は集まります。収益を稼いでいる事業の部門長、売上成績の高い営業担当などです。
結局、「稼ぎ頭」が会社の成否を握っているので、こうした人たちの声は通りやすくなるし、そこに忖度も生まれます。


重要な客を持っている人にも権力は集まります。「金」と近い話ですが、仮に売上や利益がそれほど大きくなくても、客自体の権力や声が大きいがゆえに、その営業担当者の力が強くなるといったことがあります。


希少な素材や複雑な製品を供給していて、高度な技術が収益の源泉になっているような場合、製品を開発・製造する部門または所管部門に力が発生します。

情報
ビジネスには様々な情報が必要です。市場、顧客、競合、社内状況、技術動向など。
幅広い情報をもっていれば、視野の広い判断が可能になります。一般的には、組織階層が上にに行けばいくほど情報は集まり易くなります。
しかし、平社員でも、現場レベルの情報や知見を誰よりも深く持っている人がいます。こうした”一目を置かれる”人にも、権力が生まれことがあります。(その分野の「権威」ではあるが、「権力」がない場合もあります。その場合は、その情報が「重要(クリティカル)」ではないからです。)

 

権力は必ずしも組織階層によるものではありませんが、組織階層が上にいくほど上記のようなリソースに対する権限・影響力が大きくなるため、力が強くなるのは間違いありません。また、企業の特性によっても権力の在り処が変わってきます。人依存の高いビジネスであれば人材配置権限のある部門、製品力が収益の源泉である企業は製品の配分権限をもつ部門が強いかもしれません。更には、時々のビジネス状況で、権力の在りかは移ろいます。

権力の在りかを見極め、そこに適切にアプローチすることは、ビジネスの効率を上げるテコのようなものです。
また、(いい意味で)自分も力を持ちたければ、自組織の状況を踏まえ、上記のいずれかの「重要リソース」を掌握することが重要です。

権力の視点で自身のビジネスを改めて見てみると、新しい発見があるかもしれません。