先日、ある食品メーカーがシステムのリプレースを行った際、稼働したものの障害が発生し、主力商品が何か月も出荷できないという問題が発生しました。この事件はシステム業界では大きな話題となりましたが、コンサルティングやシステム導入のプロジェクトではこのような「炎上案件」に直面することが少なくありません。大事に至らなくても、日常的に似たような問題が発生していることは珍しくありません。おそらく他の業界でも同様のことが起きているのではないかと推測します。
炎上とは何か?
ざっくり言うと、期待と実際の大幅な乖離が表面化した状態です。ベンダーが提供するサービスが顧客企業の期待を満たせない場合、ベンダー側のプロジェクトマネージャーや役員が謝罪を余儀なくされたり、最悪の場合、辞任や賠償問題にまで発展することもあります。顧客企業にとっても、こうした事態はビジネスに深刻な影響を与え、担当者や責任者の立場を危うくする責任問題につながります。
例えば、次のようなケースが典型的です。
- 当初計画していたものと完成品の乖離:
計画ではAを作る予定だったのに、プロジェクトが進むうちにBが出来上がってしまった。 - 計画と実行の乖離:
スケジュールやコストが大幅に遅れたり、予算を超過してしまった。 - 期待していた効果が出ない:
計画通りにシステムが完成しても、期待した効果が得られなかったり、通常業務がストップしてしまった。 - 完成したものが思っていたものと違う:
もっと深刻なのは、顧客は最初からAを期待していたのに、ベンダーは最初からBを作ると思っていて、実際Bを作ってしまった。
炎上が起こる原因
こうした炎上の原因にはさまざまな要素があります。
- 曖昧な計画、合意、コミュニケーションの不足
- プロジェクトマネジメントやメンバーのスキル不足
- 悪い情報が報告されない
- 関係者が多すぎて、意見の統一が難しい など
炎上を防ぐための対策
炎上を回避するには上記のような原因をつぶせばいいわけですが、スキル不足の解消やコミュニケーション能力など、一朝一夕に解決できない要素が多いのも事実です。したがって、最大の対策は、問題の発生の原因となる作業をできるだけ「やらないですます」ことです。
例えば、以下のようなアプローチです。
- 事前に実物を見せる:
システムであれば、画面イメージや他社の実物を見せることで具体的なイメージを共有し、完成イメージがずれないようにする。 - 標準仕様やスケジュールを提示:
事前に標準的な仕様や標準スケジュール、標準的な体制を提示し、それをベースに議論をする。 - 条件を事前に提示する:
こちら側の条件や要望を顧客に事前に明確に提示しておく。 - 可視化の仕組み:
あえてコミュニケーションしなくとも、進捗の状況などを顧客企業に見えるような仕掛けを導入。 - 複雑な要素を最小化する:
対象範囲や関係者、外部調整をできる限り減らし、シンプルにする。 - 不得意なことはやらない:
自分たちが不得意な作業は得意な人や外部に依頼す
他にも、いろいろ考えられるでしょう。「やらないですます」ポイントは、事前定義と個人への依存の最小化です。
炎上の経営インパクト
炎上は、チームのメンバーを疲弊させ、問題の収束には時間も費用もかかります。その結果、他の案件に手が回らなくなり、ビジネス全体に悪影響を及ぼします。ですから、炎上を防ぐことは非常に重要です。「やらないですます」ことで顧客への柔軟対応ができず、商機を逃すような気がするかもしれませんが、考えようによっては「強み」になるとも言えます。みなさんも「やらないですます」方法を考えてみませんか?