「グローバル企業の会計知識があり、英語がTOEIC800点以上で、システム導入のプロジェクト経験のある人。年収700万円」といった求人の情報を目にすることがあります。年収700万円だとまず優秀な人は採用できないと思いますが、仮に1500万円を提示したとしても、人材市場に豊富に存在するわけではないでしょう。我々コンサルティングの世界でも、「物流業務の知識があって、英語ができて、システムのPMをやったことがある人」などという高い人材要求がクライアントから上がってこることがありますが、すべての条件を満たした要員を配置するのは容易ではありません。人材不足が深刻化している今日、こうした高い人材要求に対してどう対処するのが良いでしょうか? 今日はそんな課題に対して考えを書いてみたいと思います。
結論からいうと、「スーパーマンはいない。諦めろ」です。
ではどうすれ良いのか?
私は、人を求める側の人材要求についての解像度が低いことが問題の一端だと考えています。まずは、要求スキルを掘り下げてみることです。
「グローバル企業の会計知識」「TOEIC800点以上」「システム導入プロジェクト経験」といっても、具体的に、会計のどんな領域の知識が最も必要なのか? 英語でどんな仕事をするのか? システム導入におけるどんな領域の経験がほしいのか?
そうすると、「グローバル企業の会計知識があり、英語がTOEIC800点以上」のAさんと、「システム導入のプロジェクト経験があり、基本的な会計知識のある」Bさんがいて、2人が一緒に仕事をすれば要求を満たせるかもしれません。つまり、1人で全てのスキルを網羅しようとするのではなく、チームで対応することにするのです。
もちろん、その場合は2人分の人件費が必要になります。しかし、もしかしたらいずれかのスキルは社内の他部門の誰かがすでに有しているかもしれませんし、必要な時だけ外注できるかもしれません。AIが対応できる範囲も広がっています。または、2人とも採用して、新たな別の仕事もしてもらうことができるかもしれません。
ただし、こうしたことを現実にしようとすると、組織の壁が立ちはだかります。多くの企業では自分の部署外のメンバーを使うことには抵抗があると思います。ここはこれまでの考え方を必要がありますし、人事管理や評価でも新たな課題もでてくるでしょう。
新しい管理の方法が必要かもしれません。汎用スキルや高度スキルの人材を遊軍化し、必要に応じて社内”発注”するという方法もあるかもしれません。
いずれにしても、これからは、人材のスキル管理粒度を細かくして、案件や仕事の要求ごとに「人」ではなく、「スキル」を必要なタイミングで配置していくような考え方をしないと、必要な人材を確保することは困難になってくると考えます。
採用や配置を検討する皆さんには、人材要求の解像度を上げ、人ではなくスキルを探すことをお勧めします。また既存社員のスキルをより詳細に棚卸してはいがかがでしょうか。意外なスキル、ひいてはビジネス機会が社内に眠っているかもしれません。