コラム:「エフェクチュエーション」による意思決定

「エフェクチュエーション」。あまり馴染みのないことばだと思います。

サラス・サラスバシーというアメリカの経営学者の研究が元になっているもので、優れた起業家の思考方法を体系的に整理したものです。新しいことを始める意思決定というと、情報をたくさん収集し、精緻に分析して行うべきという一般認識があるかもしれませんが、不確実性の高い環境下では、エフェクチュエーション型の意思決定の方が適しているという話です。今回は、この「エフェクチュエーション」に触れてみたいと思います。

「エフェクチュエーション」思考には、重要な5つの原則があります。
「手持ちのコマが前提」「許容可能な損失レベル」「パートナーの巻き込み」「予想外の結果を前向きに利用」「コントロール重視」です。

①「手持ちのコマが前提」
新たな事業を始めるような場合、あれもないこれもないという状態になり、事業を始める前から大きな投資をしてしまうようなケースがあります。しかし、エフェクチュエーション思考では、「手持ちのコマ(リソース)で何ができるか」をまず考えます。

②「許容可能な損失レベル」
事業への投資を考える際に、従来のアプローチでは将来の売上や利益の見込みをシミュレーションし、投資対効果計算にもとづいて、投資是非を判断していたかもしれません。しかし、エフェクチュエーション思考では、絵に描いた利益よりも、仮に失敗しても「損失が許容できるレベル」にとどまっているかどうかで判断します。

③「パートナーの巻き込み」
「手持ちのコマ」には「知り合い」が含まれます。自分だけ考えるのではなく、知り合いや、知り合いの知り合いなどに「パートナー」として協力を仰ぎます。その際、自分の計画に固執するのではなく、パートナーの知識やリソースを最大限に活用する柔軟思考が大事です。

④「予想外の結果を前向きに利用」
不透明な事業をやる以上、必ずしも良い結果ばかりが出るわけではありません。しかし、そうした失敗を学びとして改善したり、新たな事業機会を見つけるきっかけにするなど、失敗を前向きにとらえます。

⑤「コントロール重視」
未来は自然に作られるのではなく、自分が「実行」をコントロールすることで実現すべきものというマインドを持つと言う事です。

①②は、新事業への進出ハードルを下げる思考といえます。③④は、偶然の”出会い”を楽しむことで、チェレンジ意欲を高めると思います。

精緻な分析に基づく「計画主導」のアプローチも否定されるものではありません。環境に合わせて、両方のアプローチを上手く使い分けることが必要です。

当社の「インナーロードマップマネジメント」も、このエフェクチュエーションに近い思想からできています。大きな取組みを身構えて進めるよりは、まずはやってみて状況を見ながら随時修正していく方が成功確率は高いと考えています。

まずは、できるところから始めてみませんか?

 

※ 尚、この本が大変分かり易く解説しています。
エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」